脱炭素社会とは?脱炭素社会実現に向けての問題点や取り組み、目標を解説!

地球温暖化対策として注目される脱炭素社会。脱炭素社会とは、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す取り組みです。日本は2050年までのカーボンニュートラル実現を掲げていますが、エネルギー供給の化石燃料依存や産業部門のCO2排出など課題も山積しています。

政府は地域脱炭素ロードマップの導入や、2030年までに46%の温室効果ガス削減を目標に設定しています。昨今、再生可能エネルギーの拡大や電化の推進など、様々な施策で脱炭素社会の実現に向けて動き出しています。

本記事では、脱炭素社会の概念や具体的な取り組み、問題点などわかりやすく解説します。

脱炭素と脱炭素社会とは?

脱炭素と脱炭素社会は、今日のビジネス環境において重要なキーワードとなっています。これらの概念を正確に理解することは、企業の持続可能な成長戦略を立てる上で不可欠です。

脱炭素とは?

脱炭素とは、温室効果ガス、特に二酸化炭素(CO2)の排出量を実質的にゼロにすることを指します。具体的には、CO2の排出を可能な限り削減し、排出が避けられないCO2については、森林による吸収や技術的な回収などで相殺することを意味します。

脱炭素社会とは?

脱炭素社会とは、この脱炭素の概念を社会全体で実現することを目指す姿を表しています。つまり、温室効果ガスの排出を最小限に抑え、排出されたガスを回収することで、CO2の排出量を実質的にゼロをにする社会のことです。

脱炭素社会の実現は、深刻化する地球温暖化に対する最も効果的な対策として位置づけられています。気候変動による異常気象や環境破壊が顕在化する中、企業にとっても脱炭素への取り組みは避けて通れない課題となっています。

2015年に採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2°C未満に抑える目標が設定されました。これを受けて、日本を含む多くの国が2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。

脱炭素社会の実現に向けて、企業にはエネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの導入、サプライチェーン全体でのCO2排出削減、革新的な低炭素技術の開発と導入が求められています。これらの取り組みは、単なるコスト増ではなく、新たなビジネスチャンスや競争力強化につながる可能性を秘めています。脱炭素と脱炭素社会の実現は、企業の社会的責任であると同時に、持続可能な成長を実現するための重要な経営戦略の一つとなっています。今後、この潮流はさらに加速することが予想されています。

脱炭素社会に向けた取り組み、目標

脱炭素社会の実現は、気候変動への対応として国際的に重要な課題となっています。日本も2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指しており、具体的な取り組みが進められています。

以下で主要な取り組みを紹介します。

地域脱炭素ロードマップの導入

地域ごとの特性を考慮した具体的な脱炭素策を示す「地域脱炭素ロードマップ」が策定されています。これにより、2030年までに脱炭素を達成するための施策が地域で実施され、全国的なモデルとして展開されることを目指しています。

ゼロカーボンシティの普及

「ゼロカーボンシティ」は、2050年までにCO2排出量を実質ゼロとすることを目指す地方自治体の取り組みです。2021年8月時点で444の自治体がこの目標を掲げており、再生可能エネルギーの導入や電気自動車の普及促進などが行われています。

温室効果ガス削減目標の設定

日本政府は2030年度までに2013年度比で温室効果ガスを46%削減することを目指しています。この目標は、国際的な気候変動対策へのコミットメントを示すものであり、さらなる高みとして50%削減も視野に入れています。

再生可能エネルギーの拡大

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が加速しています。これにより、化石燃料依存からの脱却が図られ、持続可能なエネルギー供給体制が構築されつつあります。

脱炭素社会の実現には、国全体での取り組みと個々の企業や市民の協力が不可欠です。温暖化対策としてだけでなく、新たなビジネスチャンスや経済成長を促進する要因ともなります。持続可能な社会を構築するためには、これらの取り組みが一層重要になっていきます。

脱炭素社会実現への問題点とは?

脱炭素社会の実現に向けた取り組みは進められていますが、いくつかの重要な問題点が存在します。以下に主要な課題をまとめます。

1つ目に再生可能エネルギーが高コストであることがあります。再生可能エネルギーへの移行には高額な初期投資が必要です。太陽光発電や風力発電の導入には、家庭用で約100万円、大規模なものでは1,000万円以上の初期費用がかかるため、経済的負担が大きいとされています。

2つ目に人材不足があります。現在は、脱炭素を推進するための専門知識を持った人材が不足しています。この人材不足は、技術の開発や普及を妨げる要因となり、脱炭素化の進展を遅らせる可能性があります。

3つ目に火力発電への依存があります。多くの国では、依然として火力発電に依存しています。火力発電は化石燃料を使用するため、大量のCO2を排出します。このため、火力発電からの脱却が急務ですが、安定したエネルギー供給源を見つけることが難しい状況です。

4つ目に排出基準設定の難しさがあります。温室効果ガスの排出量を正確に測定し、基準を設定することは技術的に難しいとされています。特にCO2濃度は大気中で非常に低いため、高精度な測定技術が求められます。また、国ごとの排出基準の違いが格差を生むことも問題視されています。

5つ目に技術的課題があります。新たな脱炭素技術の開発や普及には時間と資金が必要です。特に、スケールアップや実装時期にズレが生じることで、全体的な進捗が複雑化しています。

これらの問題点に対処するためには、政府や企業が連携し、技術革新や人材育成、経済的支援など多方面からのアプローチしていくことが重要です。

脱炭素社会を目指す日本の取り組み

日本は脱炭素社会の実現に向けて、さまざまな取り組みを進めています。以下に主要な施策を解説します。

2050年カーボンニュートラル宣言

2020年10月、菅義偉首相は「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」と宣言しました。この方針は、国全体での脱炭素化の基盤となり、企業や地域社会の取り組みを促進する重要なステップです。

地域脱炭素ロードマップ

地域ごとの特性を生かした具体的な脱炭素策を示す「地域脱炭素ロードマップ」が策定されています。このロードマップでは、2030年度までに少なくとも100ヵ所の「脱炭素先行地域」を創出し、成功事例を全国に展開することを目指しています。これにより、地域特性に応じた効果的な施策が実施されることが期待されています。

ゼロカーボンシティの推進

日本全国で357の地方公共団体が「ゼロカーボンシティ」を宣言しています。これらの自治体は、温室効果ガスの排出量把握や再生可能エネルギーの普及促進を行い、地域全体で脱炭素化を進めています。

再生可能エネルギーの導入

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー源の導入が加速しています。例えば、静岡県浜松市では屋根貸し太陽光発電事業や水力発電が進められ、地域経済と環境保護が両立するモデルが構築されています。

環境教育と市民参加

脱炭素社会実現には市民の理解と協力が不可欠です。政府や地方自治体は環境教育を推進し、市民参加型のイベントや取り組みを通じて意識向上を図っています。これにより、個々の行動変容が促され、脱炭素社会への移行が加速します。

技術革新と産業支援

政府は新技術の開発や導入を支援し、企業が脱炭素化に向けた投資を行いやすい環境を整えています。また、企業同士の連携や情報共有も促進されており、産業全体での取り組みが強化されています。これらの取り組みは、日本が持続可能な未来へ向けて進むための重要なステップであり、企業や地域社会が一丸となって取り組むことが求められています。

まとめ

本記事では、脱炭素と脱炭素社会について解説しました。日本政府は2020年に2050年までのカーボンニュートラルを宣言し、2030年までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減する目標を設定しています。

しかし、脱炭素社会の実現にはいくつかの課題があります。再生可能エネルギーの導入の高い初期費用や、専門知識を持つ人材が不足していることが大きな障壁です。また、火力発電への依存度が高く、運輸業や鉄鋼業など特定の産業での脱炭素化が遅れている点も問題視されています。

これらの課題を克服するためには、政府と企業が連携し、技術革新や人材育成を進めることが不可欠です。脱炭素社会への移行は、持続可能な未来を築くための重要なステップとして位置付けられています。各企業においては、脱炭素社会の実現に向けた早期の取り組み開始が求められています。

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