カーボンニュートラルの業務 データの集計編

■記事の要約
 カーボンニュートラル業務のデータ集計は、データ収集・整備・集計の3段階で進められる。CO2排出量はScope1(直接排出)、Scope2(購入エネルギーによる間接排出)、Scope3(サプライチェーン全体)に分類され、各部門が関与する。効率化にはデータの自動収集・整備が重要で、BIツールやCO2算定ツールを活用することで集計作業を簡素化できる。企業の脱炭素経営には、データ整備と適切なツール導入が不可欠であり、経営判断として投資する価値がある。

 どうも!EcoNiPass事業責任者の水島です。今回は、カーボンニュートラル業務のデータ集計についてまとめてみたいと思います。是非、ご参考いただき、カーボンニュートラルPJの体制を作っていただけたら幸いです。

表1.カーボンニュートラル業務の全体像

業務の流れ主な部門具体的な業務
データの整備(SCOPE1,2)総務部/経理・財務部など・エネルギー使用量のデータ化
・証跡を残す
データの整備(SCOPE3)調達部/総務部/営業部など・仕入元へのヒアリング
・仕入元からのデータ集計
・会計データからの算定
データの集計
⇒ここについて解説
環境部/サスティナビリティ推進部/総務部など・拠点ごとやグループ企業ごとに集計
・SCOPE3の集計
各種レポート提出
(TCFD、SBT、省エネ法など)
環境部/サスティナビリティ推進部/総務部など・認定や法規則に基くレポート作成/提出
削減施策の立案/管理環境部/サスティナビリティ推進部/総務部など・削減施策の調査/立案
・削減施策の推進
・削減施策コストの調整
経営・事業の評価経営/経営企画など・会計/財務データとのデータ突合
・脱炭素コストの把握
・脱炭素を考慮した事業計画作成 など

1.データの用意

 まずは、データを用意するところからがスタートです。データが無い限り、集計することがでいません。CO2の算定方法を見てみましょう。

 CO2の排出量 = 活動量 × 排出原単位(排出係数)
 
 ということは、活動量と排出原単位(排出係数)というデータが
最低限必要になるということがわかると思います。

 では、活動量とは何でしょうか?以下にScope(スコープ)と呼ばれる分類と詳細について、
まとめましたのでご参考ください。

表2.Scopeの全体像

活動量内容
Scope1企業が直接的に排出する温室効果ガスのことです。 サプライチェーン排出量の仕組みでは、環境省の公開している定義では、事業者が直接排出している温室効果ガスに限らず、事業活動に関わるさまざまな排出を合わせた排出量を指しています。
例)ガソリン、重油、灯油 など
Scope2企業が他社から購入した電気や熱、蒸気などのエネルギーを使用することで間接的に排出される温室効果ガスの量です。
例)電気、蒸気、
Scope3(カテゴリー1) 購入した製品・サービス原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達
Scope3(カテゴリー2) 資本財生産設備の増設(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上)
Scope3(カテゴリー3) Scope1、2に含まれない
燃料及びエネルギー活動
調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)
調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)
Scope3(カテゴリー4) 輸送、配送(上流)調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)
Scope3(カテゴリー5) 事業から出る廃棄物廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送、処理
Scope3(カテゴリー6) 出張従業員の出張
Scope3(カテゴリー7) 雇用者の通勤従業員の通勤
Scope3(カテゴリー8) リース資産(上流)自社が賃借しているリース資産の稼働
(算定・報告・公表制度では、Scope1、2 に計上するため、該当なしのケースが大半)
Scope3(カテゴリー9) 輸送、配送(下流)出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売
Scope3(カテゴリー10) 販売した製品の加工事業者による中間製品の加工
Scope3(カテゴリー11) 販売した製品の使用使用者による製品の使用
Scope3(カテゴリー12) 販売した製品の廃棄使用者による製品の廃棄時の輸送、処理
Scope3(カテゴリー13) リース資産(下流)自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働
Scope3(カテゴリー14) フランチャイズ自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1、2 に該当する活動
Scope3(カテゴリー15) 投資株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用
その他(任意)従業員や消費者の日常生活


全てを正確に算定しようとすると、各種データを集めてくる必要があります。
事業規模や企業規模が大きくなればなるほど、収集するデータは増えてきます。
データを集めるだけでも大変な工数がかかることがおわかりいただけたでしょうか?

2.データの整備

 次に行う作業がデータの整備です。このデータの整備が後の工程に大きな影響を与えるので、妥協することなく整備をして貰えたらと思います。
 いきなり、集計表形式で集計してしまうと、後で変更するときに余計な工数がかかるので、大福帳形式(テーブル形式)でデータを保持しておくことをお勧めします。

図1.大福帳形式のデータ例

3.データの集計

 ここまでデータを用意出来たら、あとはExcelのピボットを使って集計するだけ。ここは意外と簡単にできます。ただし!データの用意と整備ができていればの話です。いきなり集計表形式で集計し始めると沼にはまってしまいます。データ整備ができていれば、様々な軸で集計し報告することが可能となります。

図2-1.ピボット集計(エネルギー別CO2排出量)

図2-2.ピボット集計(スコープ別CO2排出量)

1.データを自動的に集める仕組みを作る

 これは別の章で詳しく説明しますが、とにかくデータの収集と整備が集計の効率化の肝です。データの収集では、OCR、RPA、ETL、DBやシステム間連携などに取組むことで効率化を実現することができます。カーボンニュートラル業務は、まだまだ手作業で行う作業が多いと思いますが、企業全体で見たときにかなりの工数を使うことになるので、経営視点で意志決定をし自動化を推進することを強くお勧めします。
 また、以下の記事に記載していますが、脱炭素経営をするためにもこの時点でのデータ整備が無いと、経営視点でのデータ分析が不可能となります。
 ご参考:経営・事業の評価について

2.BIツールを活用してみる

 弊社でも提供しているBIツール(MotionBoard)があります。BIツールを用いることで、単純な集計だけでなく、ビジュアルに表現することが可能となります。これにより、ビジュアルに訴えた報告書やより課題を発見しやすくなるメリットが出てきます。
 また、BIツール側で、マスターデータとトランザクションデータで分けて管理することで、データ整備の観点でも効率化を実現することができます。

図3.BIツールで表現したCO2算定イメージ

3.CO2算定ツールを活用してみる

 BIツールとの大きな違いは、専用であるかどうか。データの入力方法や可視化方法についてカーボンニュートラルに特化した専用製品が増えてきました。カーボンニュートラルについて、調査もかなり細かく調査する必要があるので専用ツールで算定することで楽に業務を遂行できるようになると思います。また、算定したデータをBIツールへ連携することで、より深い分析も可能になると思っています。

 それぞれのツールの特徴を簡単にまとめましたので、ご参考ください。企業文化により選択するツールが異なると思いますが、どれも良し悪しがありますので事前のチェックをぜひしてください。

ExcelBIツールCO2算定ツール
メリット・0円で始められる
・セル単位で調整がきくので自由度が高い
・自動化が可能
・データ整備も可能
・高度な分析が可能
・CO2算定のノウハウがある
・データの整備も自動でされる
・必要な情報を抽出できる
デメリット・データ整備が困難
・データ量が多いと重くなる
・属人化しやすい
・要件をまとめるのに調査をする必要がある
・法改正の度に定期的に調査する必要がある
・CO2算定以外に利用ができない

 さて、今回はデータの集計業務ということで記載をしましたが、カーボンニュートラルに限らずといった内容となりました。データの集計はすべての方が行う訳では無いですが、それなりにパワーがいる業務です。ぜひ、この記事を見られた方は、データ集計されている方に労いの言葉をかけてもらえたら嬉しいです。ツールは様々ありますので、企業・社員にあったツールをご利用いただくと良いと思います。そして、この領域については、出し惜しみなく投資することを個人的にはお勧めしています。

EcoNiPass事業責任者
水島 健人


 2011年新卒でウイングアーク1st株式会社(現)に入社。Dr.Sum・MotionBoardを中心に直販/間販に従事しマネジメントを経験。その後、新規事業開発責任社として、2022年 CO2排出量可視化事業「EcoNiPass」を立ち上げ。2023年 中小企業向け経営マネジメント事業「BanSo」の立ち上げをおこなう。
 プライベートでは、「FCハマ」(少年向けのサッカークラブ)の代表を務めている。

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