持続可能な社会（英語：sustainable society）とは、環境・経済・社会のバランスを保ちながら、将来の世代にも豊かな生活を提供できる仕組みを指します。

地球温暖化や資源枯渇といった課題が深刻化する中、持続可能な社会の実現は世界的な課題となっています。

政府、企業、個人が協力し、再生可能エネルギーの活用や資源循環の促進など、具体的な対策を講じることが求められます。

本記事では、持続可能な社会の意味や定義から、海外や国内の企業から個人の具体的な取り組み事例、SDGs（持続可能な開発目標）の目的までわかりやすく解説していきます。

持続可能な社会（サステナブルな社会）とは

持続可能な社会とは、環境・経済・社会のバランスを保ちつつ、将来世代にも豊かな生活を提供できる社会のことです。

国際連合が提唱する「持続可能な開発目標（SDGs）」では、貧困の削減や気候変動対策、資源の有効活用などが重視されています。

再生可能エネルギーの活用や循環型経済の推進、公正な労働環境の整備など、多方面での対策が不可欠です。

持続可能な社会を目指す理由

持続可能な社会の実現を目指すのは、環境の保全だけでなく、経済成長や社会の安定にもつながるためです。

気候変動の影響による自然災害の増加や資源の枯渇は、生活や産業に深刻な被害をもたらします。さらに、貧困や格差の拡大は社会不安を引き起こし、経済の発展を妨げる要因となります。

環境・経済・社会のバランスを維持することで、持続可能な未来を築くことが可能です。

持続可能な社会を実現するためには

持続可能な社会の実現には、環境負荷の低減、経済の持続的成長、公平な社会の構築が不可欠です。

再生可能エネルギーの導入や省エネルギー技術の開発により、環境への影響を最小限に抑えることが求められます。

さらに、資源の効率的な利用やリサイクルの推進、公正な雇用機会の提供も重要です。企業や政府、個人が協力し、長期的な視点で取り組むことが必要となります。

SDGs（持続可能な開発目標）とは

SDGs（Sustainable Development Goals：持続可能な開発目標）は、2015年9月の国連サミットで全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に含まれる国際目標です。

これらの目標は、2030年までに持続可能でより良い世界を実現することを目指し、17のゴールと169のターゲットから構成されています。

SDGsは、貧困や飢餓の撲滅、教育の質向上、気候変動対策など、幅広い課題に取り組むものであり、地球上の「誰一人取り残さない（leave no one behind）」ことを誓っています。

先進国と途上国の両方が取り組む普遍的な目標であり、日本も積極的に推進しています。

SDGsにおける5つの課題

SDGs（持続可能な開発目標）には、多くの意義がある一方で、いくつかの課題も指摘されています。主な問題点を5つ挙げます。

1. 目標達成の進捗が遅い

SDGsの達成期限である2030年まであと数年ですが、貧困や気候変動などの問題解決は思うように進んでいません。

特に新型コロナウイルスの影響により、経済や教育の格差が広がり、多くの国が目標達成から遠ざかっています。

2. 各国や地域間での格差が大きい

SDGsは全世界での達成を目指していますが、国や地域によって進捗状況に大きな差があります。

先進国は環境対策や技術革新を進めていますが、発展途上国では貧困やインフラ不足が深刻で、目標達成が難しい状況です。

3. 目標が抽象的で測定が困難

SDGsの目標やターゲットは幅広く設定されていますが、一部の項目は定量的な測定が難しく、具体的な評価が困難です。

そのため、企業や政府が取り組みを進めても、実際にどの程度目標に近づいているのかが明確にならないケースがあります。

4. 企業による「SDGsウォッシュ」

一部の企業は、実際には持続可能な取り組みをしていないにもかかわらず、SDGsに取り組んでいると見せかける「SDGsウォッシュ」が問題視されています。

環境負荷の高い製品や事業を継続しながら、表面的な活動のみをアピールする事例もあります。

5. 資金不足と政策の不十分さ

持続可能な開発を推進するには多額の資金が必要ですが、発展途上国では財源が不足し、十分な対策が取れないことが課題となっています。

また、一部の政府は短期的な経済成長を優先し、環境や社会課題への対策を後回しにする傾向があります。

持続可能な社会を実現するための世界の取り組み

日本の取り組み事例

日本では、持続可能な社会の実現に向けて、政府を中心に多様な取り組みが進められています。2015年に国連で採択された持続可能な開発目標（SDGs）を推進するため、同年12月に「SDGs実施指針」を策定し、国内外での目標達成に向けた基本方針を示しました。

さらに、地域の活性化と持続可能な経済社会の実現を目指す「デジタル田園都市国家構想」を推進し、地方の個性を活かした取り組みを支援しています。

また、子どもの貧困対策や子育て支援を強化するため、2023年中に新たな行政組織を設置し、子ども中心の行政を確立する方針です。

環境面では、温暖化対策を成長につなげる「クリーンエネルギー戦略」を策定し、強力に推進しています。

加えて、海洋プラスチックごみ対策や生物多様性の保全など、地球環境問題にも積極的に取り組んでいます。

これらの取り組みを通じて、日本は持続可能な社会の実現に向け、経済・社会・環境の各分野で総合的な施策を展開しています。

海外の取り組み事例

世界各国では、持続可能な社会の実現に向けて多様な取り組みが進められています。国際連合工業開発機関（UNIDO）は、持続可能な開発のための2030アジェンダの達成を目指し、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」への貢献を通じて、他のSDGs目標にも間接的に関与しています。

また、国際連合教育科学文化機関（ユネスコ）の政府間海洋学委員会（IOC）は、海洋環境および資源に関する知識を増強するため、海洋観測・調査、データ管理、津波早期警戒システムの構築など、国際的な海洋科学協力を推進しています。

さらに、国際協力NGOセンター（JANIC）は、持続可能な開発目標（SDGs）の達成に向け、政府、企業、研究者、NGO・NPOなど多様な主体と連携し、貧困や飢餓、気候変動、平和な社会など、世界の課題解決を促進しています。

これらの国際的な取り組みを通じて、持続可能な社会の実現に向けた努力が続けられています。

国ごとの具体例

フィンランド

フィンランドでは、国連でSDGsが採択される前から「持続可能な開発に関する国家委員会」を設置し、持続可能な社会の推進を行っています。「コミットメント2050」というシステムを活用し、企業や個人が持続可能性を推進する行動目標を設定しています。

スウェーデン

スウェーデンは、政府と国民が協力してSDGsに積極的に取り組んでいます。具体的には、100種類に及ぶゴミの分別やデポジット制の容器回収施設の充実、政府の大臣の半数が女性であること、教育現場でLGBTや同性カップルに関するカリキュラムの導入など、多岐にわたる取り組みを行っています。

デンマーク

デンマークには、持続可能な社会を目指す「エコビレッジ」が複数存在します。特に注目されているのが「UN17 Village」プロジェクトで、SDGsの17目標を満たすエコビレッジの建設を進めています。このビレッジでは、廃棄予定の資材を活用した建設や、ソーラーパネルの設置、雨水再利用システムの導入などが計画されています。

ノルウェー

ノルウェーは、2030年までに温室効果ガスを50～55%削減する目標を掲げています。首都オスロでは、電気自動車の優遇政策や中心部への車の進入を制限する「カーフリー政策」、毎年11月の「リサイクル週間」など、環境に配慮した取り組みが積極的に行われています。

持続可能な社会を実現するための企業の事例

日本国内企業の取り組み事例

日本企業は、持続可能な社会の実現に向けて、さまざまな取り組みを進めています。これらの活動は、SDGs（持続可能な開発目標）の達成を目指し、社会課題の解決と企業価値の向上を両立させるものです。

例えば、JALグループは事業を通じて社会の課題解決に取り組んでおり、各目標に関する具体的な活動を展開しています。

また、環境省は「持続可能な開発目標（SDGs）活用ガイド」を作成し、企業がSDGsに取り組む意義や具体的な進め方を示しています。

さらに、経済産業省関東経済産業局では、SDGs達成を通じた中小企業の企業価値向上・競争力強化に向けた支援を行っています。

これらの取り組みにより、日本企業は持続可能な社会の構築に貢献しています。

海外企業の取り組み事例

多くの海外企業が、持続可能な社会の実現に向けて積極的な取り組みを行っています。例えば、欧州では、SDGs達成に寄与する政策や経営戦略を導入する企業が増加しています。

また、米国の企業も、SDGsやサステナビリティに対する取り組みを強化しています。 さらに、持続可能な開発のための世界経済人会議（WBCSD）などの国際的な組織が、企業の持続可能な活動を支援しています。

これらの取り組みにより、企業は環境負荷の低減や社会的責任の履行を目指し、持続可能な社会の構築に貢献しています。

企業がSDGsに取り組むメリットとデメリット

メリット

企業価値の向上	新たなビジネス機会の創出	リスクマネジメントの強化
SDGsに積極的に取り組むことで、社会的責任を果たす企業としての評価が向上し、ブランド価値が高まります。消費者や投資家からの支持を得やすくなり、競争優位性を確立できます。	持続可能な製品やサービスの開発、環境配慮型ビジネスモデルの導入など、新市場への参入や収益機会の拡大につながります。政府や自治体の補助金や優遇制度の活用も可能になります。	環境問題や労働環境の改善などに取り組むことで、法規制の厳格化によるリスクを低減できます。また、サプライチェーンの持続可能性を高めることで、長期的な安定経営が可能になります。

デメリット

コストの増加	短期的な利益への影響	グリーンウォッシュのリスク
持続可能な製品の開発や環境負荷の低減を目指す施策には、多額の投資が必要になります。特に中小企業にとっては、初期投資や維持コストが負担になることがあります。	SDGsへの取り組みは長期的な視点でのメリットが大きいですが、短期的には利益を圧迫する可能性があります。投資家や株主から即時の利益を求められる企業にとっては、バランスが難しい課題です。	SDGsの取り組みを対外的にアピールする際に、実態が伴わない場合「グリーンウォッシュ（見せかけの環境配慮）」と批判されるリスクがあります。透明性のある情報開示が求められ、適切な対応が必要です。

まとめ

持続可能な社会の実現には、環境・経済・社会の3つの側面でバランスの取れた取り組みが求められます。

SDGsをはじめとする国際的な枠組みに沿いながら、企業や自治体、個人が具体的な行動を積み重ねることが重要です。

持続可能な取り組みを推進することで、長期的な成長や社会全体の安定につながります。今後も多様な視点からの施策が必要です。