■AIによる記事の要約

　カテゴリー9（下流輸送・配送）は、企業が販売した製品の輸送に伴うGHG排出量を指し、適切な算定と管理が求められています。輸送手段や距離、燃料消費量の正確な把握が必要ですが、多様な業者の関与や異なる算定基準が課題となります。デジタル技術や標準化の推進、低炭素輸送の導入、サプライチェーン全体での協力が解決策となります。適切な管理により環境負荷を低減し、企業の競争力向上にもつながります。

「カテゴリー9（下流輸送・配送）」の重要性とその環境影響

　近年、企業の環境負荷を低減するために、温室効果ガス（GHG）排出量の算定と管理が求められています。特に、サプライチェーン全体における間接排出（Scope 3）の重要性が高まっており、その中でも「カテゴリー9（下流輸送・配送）」は、企業が販売した製品が顧客に届けられるまでの輸送過程で発生するGHG排出量を指します。

　グローバル化が進む現代において、製品の輸送は多様な手段を用いて行われ、輸送距離も拡大しています。そのため、企業が環境対策を強化する上で、輸送・配送に伴う排出量の削減は避けて通れない課題となっています。しかし、カテゴリー9の排出量を正確に把握し、適切に管理するためには、多くの障壁が存在します。

　本記事では、カテゴリー9における排出量の算定方法、直面する課題、そして効果的な削減施策についてEcoNiPassチームが詳しく解説します。企業がどのようにして持続可能な物流を実現し、環境負荷を低減できるのか、その具体的な手法を見ていきましょう。

カテゴリー9とは？

　Scope 3とは、企業の温室効果ガス（GHG）排出量のうち、直接排出（Scope 1）や購入エネルギーによる間接排出（Scope 2）を除いた、サプライチェーン全体にわたるその他の間接排出を指します。その中でカテゴリー9（下流輸送・配送）は、製品やサービスが自社の施設を離れ、顧客に届けられるまでの輸送・配送に関連する排出を対象としています。

　カテゴリー9の排出量には、企業が販売する製品やサービスが最終消費者またはビジネス顧客に到達するまでに発生するすべての輸送活動が含まれます。具体的には、物流業者によるトラック輸送、航空貨物、鉄道輸送、船舶輸送など、さまざまな手段を通じた配送が該当します。特に、グローバル規模で事業を展開する企業では、海外市場への輸送がGHG排出量の大きな割合を占めることがあります。

　カテゴリー9の排出量は、輸送手段ごとに大きく異なります。以下の表は、一般的な輸送手段のCO2排出量の目安を示しています。

輸送手段	排出量（g CO2/tkm）*
航空輸送	500–900
トラック輸送	60–150
鉄道輸送	10–50
船舶輸送	3–30

*g CO2/tkm：1トンの貨物を1km輸送した際に発生するCO2排出量。

この表からも分かるように、航空輸送は非常に高い排出量を持つ一方、船舶や鉄道輸送は相対的に環境負荷が低い輸送手段といえます。そのため、企業は輸送手段の選定によって排出量を削減することが可能です。

何が必要？

　カテゴリー9の排出量を適切に算定・管理するためには、以下の要素が必要です。

輸送手段の特定

　まず、輸送手段を正確に特定することが重要です。トラック、船舶、航空機、鉄道など、製品やサービスの輸送に使用される手段を把握し、それぞれの区間においてどの輸送手段が利用されているかを詳細に記録する必要があります。これにより、輸送の実態を明確にし、排出量の算定精度を高めることができます。

輸送距離の算出

　輸送距離を正確に算出することも求められます。各輸送手段ごとの走行距離を特定し、単純な直線距離ではなく、実際の輸送ルートを考慮した距離を把握することで、より正確な排出量の算定が可能となります。例えば、道路の迂回や港での待機時間なども考慮することで、より実態に即したデータを得ることができます。

エネルギー消費量の把握

　加えて、エネルギー消費量の把握も欠かせません。使用される燃料の種類として、ディーゼル、ガソリン、バイオ燃料、電力などがあり、それぞれの消費量を正確に算出することで、排出量の見積もりが可能になります。燃費データを活用して総消費量を計算し、それをもとに排出原単位を適用することで、より詳細な排出量の分析が行えます。使用する輸送手段ごとのCO2排出係数を適用し、企業の物流データと国際的な排出基準（例えばGHGプロトコル）を活用することで、国際的に通用する排出量の算定が可能になります。

データ収集と管理の体制

　さらに、データ収集と管理の体制も整備する必要があります。排出量の管理には、取引先や物流業者との協力が不可欠であり、輸送に関する正確なデータを提供してもらうことで、一貫性のある算定が可能になります。また、リアルタイムでデータを収集し、分析できるシステムを導入することで、継続的な監視と改善が可能になります。

　このように、カテゴリー9の排出量を正確に把握するためには、単に輸送手段や距離を知るだけではなく、燃料消費量や排出原単位を適用し、適切なデータ管理を行うことが求められます。企業がこれらを適切に管理することで、より正確なGHG排出量の算定と、効果的な削減対策の立案が可能になります。

課題

　カテゴリー9の算定や管理には、以下のような課題が存在します。

データ収集の難しさ 

　輸送・配送のプロセスには複数の業者が関与しており、各業者が独自の方法でデータを管理しています。そのため、輸送手段ごとのエネルギー消費量や輸送距離、使用燃料の種類などの情報を正確に収集することが困難です。また、データの粒度やフォーマットが統一されていないため、企業が一元的に管理し、正確な排出量を算出するには追加の調整が必要になります。

排出量の算定基準の違い 

　GHG排出量の算定にはさまざまな基準があり、地域や業界によって異なる計算方法が採用されています。例えば、欧州ではEUの規制（例：GHGプロトコルに基づく基準）が一般的ですが、米国ではEPA（環境保護庁）のガイドラインがよく用いられます。そのため、グローバルに事業を展開する企業は、異なる算定基準の中で一貫したレポーティングを行う必要があり、計算の複雑さが増します。

削減施策の実行コスト 

　CO2排出量を削減するためには、燃費の良い車両への切り替えや、CO2排出量の少ない燃料（例：バイオ燃料、水素、電気）の採用が求められます。しかし、EVトラックや水素燃料車などの低炭素輸送手段は、初期導入コストが高額であり、多くの企業にとって大きな投資負担となります。また、鉄道輸送や船舶輸送への切り替えも、物流ネットワーク全体の見直しが必要であり、短期的にはコスト増につながる可能性があります。

サプライチェーン全体の協力 

　企業単体での取り組みでは、カテゴリー9の排出量を大幅に削減することは難しく、物流業者や取引先と連携して取り組む必要があります。しかし、物流業者によっては排出量削減を優先しないケースもあり、排出データの共有や削減施策の実施が難しいことがあります。加えて、サプライチェーン全体でのデータ共有が進まないと、排出量の正確な可視化や削減策の検討が難しくなります。

解決手段

　これらの課題に対応するためには、以下のような手段が有効です。

デジタル技術の活用 

　IoT（モノのインターネット）やGPSトラッキングを活用することで、輸送手段ごとの燃料消費量や走行距離をリアルタイムで把握できます。また、ビッグデータ分析を活用することで、最適な輸送ルートを算出し、無駄な移動を削減することが可能になります。さらに、ブロックチェーン技術を用いることで、物流データの改ざんを防ぎ、透明性の高いデータ管理を実現できます。

標準化の推進 

　国際的な基準に基づいた排出量算定方法を採用することで、異なる地域や業界間でのデータ比較が容易になります。例えば、GHGプロトコルやISO 14064規格をベースにした統一的な報告フォーマットを導入することで、算定の透明性を向上させることができます。また、サプライチェーン全体での共通の指標を設けることで、取引先とのデータ共有がスムーズになります。

低炭素輸送手段の導入 

　排出量削減のためには、EVトラックやバイオ燃料、鉄道輸送などの環境負荷の低い輸送手段の活用が不可欠です。特に、都市部の短距離配送にはEVトラックの導入が有効であり、電動化が進むことでGHG排出量を大幅に削減できます。また、長距離輸送においては、鉄道や船舶の利用を増やすことで、全体の排出量を抑えることができます。さらに、共同輸送を活用することで、積載率を向上させ、輸送効率を最大化することも重要です。

パートナーシップの強化 

　物流業者や取引先と協力し、環境負荷を低減するための枠組みを構築することが求められます。例えば、排出量削減の目標を共有し、インセンティブ制度を設けることで、物流業者の環境対応を促進することができます。また、共同配送の取り組みを推進することで、企業間で輸送コストを抑えながら、排出量を削減することが可能です。加えて、取引先と長期契約を結ぶことで、持続可能な輸送手段への投資を促進することも有効です。

　カテゴリー9の適切な管理と排出削減は、企業の環境戦略の中でも重要な要素となります。デジタル技術の活用や標準化の推進、低炭素輸送手段の導入、そしてサプライチェーン全体での協力を強化することで、持続可能な物流の実現が可能となります。

まとめ

　カテゴリー9（下流輸送・配送）の適切な管理と排出削減は、企業がカーボンニュートラルを達成するための重要なステップです。輸送・配送におけるGHG排出量の算定と管理を適切に行うことで、企業は持続可能な物流を実現し、環境負荷を低減することができます。

　そのためには、デジタル技術を活用したデータの可視化、標準化された排出量算定基準の導入、低炭素輸送手段の活用、サプライチェーン全体での協力が不可欠です。特に、EVトラックやバイオ燃料、鉄道・船舶輸送の導入、さらには最適な輸送ルートの設計によって、大幅な排出削減が可能となります。

　また、EcoNiPassのような環境対策を支援するプラットフォームを活用することで、企業は物流における排出量をより正確に把握し、最適な削減施策を実施できます。EcoNiPassは、物流の排出量を可視化し、サプライチェーン全体での削減策を支援するツールとして活用できます。

　企業が積極的に取り組むことで、カテゴリー9の排出削減は単なるコスト削減ではなく、競争力の向上やブランド価値の向上にもつながります。持続可能な社会の実現に向けて、カーボンニュートラルの目標を念頭に置きつつ、具体的な施策を進めていくことが求められます。