【簡単解説シリーズ】再エネ賦課金とは?企業の担当者必見の仕組みから最新動向までたっぷり紹介!

■AIによる記事の要約
再エネ賦課金とは、再生可能エネルギーの普及を目的に、電気利用者が電気料金に上乗せして負担する金額です。2012年の導入以来、FITやFIP制度を財源として電力会社が再エネを買い取る仕組みを支えています。2025年度は過去最高の3.98円/kWhに達し、企業や家庭の電力コストに大きな影響を及ぼしています。企業は省エネや再エネ設備の導入などで対応が可能で、賦課金は脱炭素社会に向けた重要な政策手段でもあります。
はじめに
電気料金の明細を確認すると、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という項目が記載されていることをご存知でしょうか。この賦課金は年々増加傾向にあり、企業経営に無視できない影響を与えています。特に2025年度は制度開始以来の最高額となり、企業の財務担当者やサステナビリティ担当者にとって重要な課題となっています。
本記事では、再エネ賦課金の基本的な仕組みから最新の動向、企業の対応策までを体系的に解説します。エネルギーコスト管理と脱炭素経営を両立させたい企業担当者の方々に向けて、実践的な情報を提供します。
1.再エネ賦課金とは何か
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)とは、再生可能エネルギーの普及促進を目的として、電気の使用者が電気料金に上乗せして負担する金額のことです。この制度は、日本のエネルギー自給率向上と環境負荷の低減を図るために設けられました。
再エネ賦課金は、2012年7月に導入された固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)を財政的に支える仕組みとして機能しています。FIT制度では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電された電気を、電力会社が一定期間、固定価格で買い取ることが義務付けられています。2022年からは市場価格に一定のプレミアムを上乗せするFIP制度(Feed-in Premium)も導入され、再エネの市場統合を促進しています。
これらの制度で買い取られる再エネ電力の費用は、最終的に電気料金を通じて国民全体で広く負担する仕組みとなっており、それが再エネ賦課金として私たちの電気料金に上乗せされています。
再エネ賦課金の定義と導入背景
再エネ賦課金は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ特措法)」に基づいて徴収される料金です。再生可能エネルギーの導入初期には発電コストが高く、市場競争力を持たない状況でした。そこで、再エネ発電事業者の投資回収を保証するため、固定価格で一定期間買い取る制度が設けられ、その買取費用を広く電気利用者で負担する仕組みが構築されました。
FIT制度(固定価格買取制度)との関連性
FIT制度では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電された電気を、電力会社が固定価格で一定期間(10年~20年)買い取ることを義務付けています。この買取費用は電力会社の負担ではなく、最終的に電気料金の一部として電気の利用者全体で負担する仕組みとなっており、その負担分が「再エネ賦課金」です。
電気料金における賦課金の位置づけ
電気料金は大きく分けて「基本料金」「電力量料金」「再エネ賦課金」などで構成されています。再エネ賦課金は使用電力量に比例して課金され、電気料金の明細書に別項目として記載されています。近年では電気料金全体に占める再エネ賦課金の割合が増加しており、特に電力消費量の多い企業にとっては大きなコスト要因となっています。
再エネ特措法の概要と目的
再エネ特措法は、エネルギー安全保障の確保、地球温暖化対策、産業競争力の強化を目的として制定されました。この法律により、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図ることが定められています。2022年4月からは、市場への統合を促す新制度(FIP制度)も導入され、制度の発展が続いています。
出典:経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の買取価格等と2025年度の賦課金単価」
URL:https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250321006/20250321006.html
2.賦課金の仕組みと計算方法
再エネ賦課金は、すべての電気の使用者に対して、使用電力量に応じて課される形で電気料金に上乗せされます。具体的には、電気料金の請求書に「再生可能エネルギー発電促進賦課金」として別途表示され、基本料金や電力量料金とは区別して請求されます。
賦課金単価は、以下の計算式によって決定されます
「(買取総額-回避可能費用+事務費)÷予想販売電力量」
この計算式の各要素は次の通りです
- 買取総額:電力会社がFIT・FIP制度で買い取る再エネ電力の総額
- 回避可能費用:再エネ電力を調達することで電力会社が節約できる費用
- 事務費:制度運営に必要な経費
- 予想販売電力量:当該年度の電力販売予測量
賦課金単価は毎年度見直され、経済産業大臣が決定します。この単価は全国一律で適用され、地域や電力会社による差はありません。単価は毎年3月頃に翌年度分が発表され、4月の電気料金から新単価が適用されます。
出典:経済産業省、タイナビ「再エネ賦課金とは?今後の見通しや単価の推移」
URL:https://www.tainavi.com/library/13240/
3.再エネ賦課金の推移と今後の見通し
制度開始から現在までの単価推移
再エネ賦課金は制度開始の2012年度には0.22円/kWhでしたが、再エネ導入量の増加に伴い年々上昇しています。過去10年間の賦課金単価(税込)の推移は以下の通りです。

2022年度までは毎年上昇傾向にありましたが、近年は上昇ペースが緩やかになり、将来的には低減していくことが見込まれています。
賦課金総額の変化
再エネ賦課金の総額も年々増加しており、2022年度には約2.7兆円に達しています。これは制度開始当初の10倍以上の規模となっています。特に太陽光発電の急速な導入が賦課金総額の増加に大きく影響しています。
買取価格の推移との関連性
再エネの買取価格(調達価格)は年々低下傾向にあります。例えば、事業用太陽光(10kW以上)の買取価格は以下のように推移しています。
年度 | 買取価格(円/kWh) |
---|---|
2012 | 40 |
2015 | 27 |
2018 | 18 |
2021 | 12 |
2023 | 9(入札制) |
買取価格の低下は、将来的な賦課金負担の抑制に寄与します。しかし、過去の高い買取価格で認定された設備の買取期間(10〜20年)が続く間は、一定の負担が継続します。
2025年度の賦課金単価と負担額
2025年度の再エネ賦課金単価は3.98円/kWhと決定されました。これは2024年度の3.45円/kWhから0.53円/kWh増加し、制度開始以来最高額となっています。
この単価に基づく標準家庭(月間使用電力量260kWh)の負担額は以下の通りです。
利用者 | 月間使用電力量 | 月額負担(円) | 年間負担(円) |
---|---|---|---|
標準家庭 | 260kWh | 1,035 | 12,420 |
中小企業 | 1,500kWh | 5,970 | 71,640 |
大規模事業所 | 100,000kWh | 398,000 | 4,776,000 |
再エネ賦課金は2012年の制度開始時は0.22円/kWhでしたが、再エネ導入量の増加に伴い年々上昇しています。政府の試算によれば、賦課金は2030年代前半まで増加傾向が続き、ピーク時には4.5円/kWh前後に達する見通しです。その後、買取期間の満了に伴い減少に転じる予測となっています。
将来予測と長期見通し
経済産業省の試算によると、2030年頃をピークに賦課金総額は徐々に低減していく見通しです。これは以下の要因によるものです:
- 買取価格の低下:技術発展による発電コスト低減
- 買取期間の終了:高価格で認定された初期の設備が買取期間満了を迎える
- 市場統合:FIP制度への移行による補助金依存度の低下
- 再エネコストの低下:グリッドパリティ(従来電源と同等のコスト)達成
長期的には、再エネの自立化と市場統合が進み、賦課金による支援の必要性は徐々に低下していくことが期待されています。
出典:経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の買取価格等と2025年度の賦課金単価」
URL:https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250321006/20250321006.html
出典:産経新聞「再エネ賦課金が過去最高 32年ごろまで増加」
URL:https://www.sankei.com/article/20250405-YVTX5NRSDZICDFPT7UP2E2RLFA/
出典:経済産業省「エネルギー白書2023」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/
出典:調達価格等算定委員会「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/index.html
4. 企業にとっての影響と対応策
再エネ賦課金の上昇は企業経営に大きな影響を与えています。特に電力を多く使用する製造業などでは、賦課金がエネルギーコスト増加の主要因となっているケースも少なくありません。また、サステナビリティ経営が求められる現在、この負担をどう捉え、どう対応するかは企業の競争力にも関わる重要課題です。
負担軽減策として、電力多消費事業者向けの賦課金減免制度があります。この制度は、国際競争にさらされている製造業などを対象に、一定の条件を満たす場合、賦課金負担の最大80%が減免されるものです。申請には、年間の買電量が100万kWh以上であることや、売上高に占める電気使用量の割合(原単位)が一定以上であることなどの要件があります。
また、企業が自主的に取り組める対応策としては以下が挙げられます:
- 省エネ投資による電力使用量の削減
- 自家消費型の再生可能エネルギー設備の導入
- 再エネ電力メニューや環境価値証書の活用
- エネルギーマネジメントシステムの導入による最適化
これらの取り組みは賦課金負担の軽減だけでなく、企業のESG評価向上やカーボンニュートラル達成にも寄与するものです。
出典:新電力ネット「再生可能エネルギー発電促進賦課金の推移」
URL:https://pps-net.org/statistics/renewable
5. 再エネ賦課金による社会的影響
家計への影響
標準的な家庭(年間電力使用量約3,600kWh)の場合、2023年度は年間約12,420円の負担となっています。電気料金全体に占める割合は約1割程度と推定されます。家計への影響を緩和するため、政府は電力料金の激変緩和措置を実施しているほか、省エネルギー対策の普及啓発を進めています。
産業競争力への影響
電力多消費産業(鉄鋼、化学、セメントなど)にとって、再エネ賦課金は国際競争力に直結する重要な問題です。例えば、大規模製鉄所では年間数億円から10億円を超える負担となる場合もあります。このため、前述の減免制度が設けられていますが、減免対象とならない産業や中小企業にとっては依然として大きな負担となっています。
日本の産業用電力料金は国際的に見ても高い水準にあり、再エネ賦課金はその一因となっています。経済産業省の調査によれば、日本の産業用電力料金は米国の約1.5倍、韓国の約1.3倍の水準です。
再エネ導入促進効果
一方で、再エネ賦課金制度は日本の再生可能エネルギー導入拡大に大きく貢献しています。FIT制度開始前(2011年度)と比較して、再エネの発電電力量は約3倍に増加しており、特に太陽光発電は約20倍に拡大しました。2022年度には再エネが日本の総発電電力量の約20%を占めるまでに成長しています。
エネルギーミックスへの貢献
政府は2030年度のエネルギーミックスにおいて、再エネの割合を36〜38%まで引き上げる目標を掲げています。賦課金制度はこの目標達成に向けた重要な政策ツールとなっています。再エネの拡大は、エネルギー自給率の向上や温室効果ガス削減にも貢献します。
出典:環境省「再生可能エネルギー導入拡大の効果検証」
https://www.env.go.jp/earth/report/
出典:資源エネルギー庁「日本のエネルギー2023」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/
6.国際比較:日本と諸外国の再エネ支援制度
国名 | 制度名 | 特徴 |
---|---|---|
日本 | FIT・FIP | 電気料金に賦課金を上乗せして再エネを支援 |
ドイツ | EEG賦課金(廃止) | 2022年から税財源に切替 |
イギリス | CfD | 差額決済型。市場価格と連動し、双方向補助 |
アメリカ | ITC・PTC | 税制優遇措置中心。電気料金に賦課なし |
ドイツのEEG賦課金との比較
ドイツでは日本のFIT制度のモデルとなった再生可能エネルギー法(EEG)に基づく賦課金制度が実施されていました。かつてはEEG賦課金が電気料金の約2割を占める時期もありましたが、2022年7月からはEEG賦課金が廃止され、再エネ支援費用は連邦予算(エネルギー・気候変動基金)から賄われる形に移行しています。
ドイツは日本に先行して再エネ導入を進めた結果、早くから賦課金が高騰し、国民負担の軽減が政治的課題となりました。電気料金の上昇に対する国民の反発を受け、制度改革が進められた経緯があります。
イギリスのCfD制度との比較
イギリスでは差額決済契約(Contract for Difference, CfD)方式を採用しています。これは固定価格と市場価格の差額を補填する仕組みで、市場価格が固定価格を上回る場合は逆に発電事業者が差額を返還する双方向の制度です。
CfD方式では市場価格の上昇により補助金負担が減少または逆転する可能性があり、近年の電力価格高騰局面では実際に事業者からの返還が発生しています。日本のFIP制度もこの考え方を部分的に取り入れていますが、完全な双方向型ではありません。
米国の各種インセンティブとの比較
米国では、連邦レベルでは投資税額控除(ITC)や生産税額控除(PTC)といった税制優遇措置が中心で、電気料金に上乗せする賦課金方式は採用していません。州レベルでは再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)制度を導入し、電力会社に一定割合の再エネ調達を義務付ける方式が一般的です。
2022年に成立したインフレ抑制法(IRA)では、クリーンエネルギーへの大規模な税額控除が導入され、今後10年間で約3,700億ドルの支援が行われる予定です。米国型の支援は予算措置や税制を通じた形態が中心で、消費者の電気料金に直接影響しにくい特徴があります。
国際的な再エネ支援の潮流
国際的な再エネ支援は、初期段階のFIT型固定価格買取から、より市場原理を取り入れた制度へと移行する傾向にあります。具体的には以下のような変化が見られます:
- 固定価格から入札制へ:競争原理による買取価格決定
- FITからFIP(Feed-in Premium)へ:市場価格連動型の補助金制度
- 賦課金方式から税財源方式へ:エネルギー転換コストの負担方法の見直し
- 技術中立的な支援へ:特定技術への過度な支援からの脱却
日本も2022年度からFIP制度を導入するなど、国際的な潮流に沿った制度改革を進めています。
出典:国際エネルギー機関(IEA)「Renewables 2023 Analysis and forecast to 2028」
https://www.iea.org/reports/renewables-2023
7.企業経営における再エネ賦課金への対応策
コスト削減のためのエネルギー効率化
再エネ賦課金は使用電力量に比例するため、電力消費量の削減が最も直接的な対策となります。具体的な取り組みとしては:
- 高効率設備への更新:LED照明、高効率モーター、インバータ制御など
- エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入:電力使用状況の見える化と最適制御
- 操業形態の最適化:電力需要ピークの分散、夜間操業へのシフトなど
- 断熱・遮熱対策:建物の断熱性能向上、遮熱フィルム導入など
これらの取り組みは賦課金負担の軽減だけでなく、基本料金や電力量料金の削減にも寄与します。省エネ投資は経済産業省の各種補助金も活用可能です。
自家消費型太陽光発電の活用
自社の施設に太陽光発電を設置し、発電した電力を自家消費することで、系統からの購入電力量を減らし、賦課金負担を軽減する方法も有効です。近年は太陽光発電コストの低下により、自家消費型の太陽光発電は投資回収が可能なケースが増えています。
自家消費型太陽光発電のメリットは
- 電力購入量の削減による電気料金(賦課金含む)の削減
- ピークカット効果による基本料金の削減可能性
- RE100等への対応としてのアピール効果
- BCPの強化(災害時の自立電源確保)
屋根や未利用地の有効活用により、コスト削減と環境貢献の両立が可能です。
再エネ調達(PPA、コーポレートPPA)
電力購入契約(PPA:Power Purchase Agreement)を活用し、再エネ由来の電力を調達する方法も注目されています。特に近年は、発電事業者と直接契約を結ぶコーポレートPPAが増加傾向にあります。PPAには以下の形態があります:
- オンサイトPPA:需要家の敷地内に発電設備を設置するモデル
- オフサイトPPA:遠隔地の発電所から送電線を通じて電力を供給するモデル
- バーチャルPPA:実際の電力は別途調達し、環境価値のみ取引するモデル
PPAは賦課金の直接的な削減にはつながらないケースが多いですが、長期的な電力コストの安定化やRE100などの取り組みへの対応として有効です。
RE100等の国際イニシアチブへの対応
RE100(企業が使用電力の100%を再エネで調達することを目指す国際イニシアチブ)やSBT(科学的根拠に基づく排出削減目標設定)など、国際的な脱炭素イニシアチブへの参加企業が増加しています。こうした取り組みは、単なるコスト要因としての再エネ賦課金への対応だけでなく、企業価値向上につながる戦略的な視点が重要です。
具体的な対応としては
- 自家発電設備の導入
- 再エネ電力メニューの選択
- 非化石証書や環境価値の購入
- サプライチェーン全体での再エネ導入推進
先進的な企業は、コスト要因を企業価値向上の機会に転換する戦略を展開しています。
出典:環境省「再生可能エネルギー導入ガイドライン」
https://www.env.go.jp/earth/post_93.html
出典:日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)「企業の再エネ調達ガイドブック」
https://japan-clp.jp/
8. 再エネ賦課金を導入した企業の最新事例
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)は、企業の電力コストに直接影響を与えています。2025年度は1kWhあたり3.98円に上昇し、特に電力多消費型の業種で負担増が顕著です。以下、最新の企業事例とその対応策を紹介します。
製造業の中小企業:太陽光発電導入によるコスト削減
中部地方の製造業中小企業では、工場屋根に50kWの太陽光発電設備を導入しました。平日日中の稼働時間帯に発電した電力を自家消費することで、電力会社からの購入電力量を約30%削減しています。
この結果、年間の電力コストは約120万円削減され、再エネ賦課金の負担も月あたり約1万円軽減されました。導入時には自治体の補助金を活用し、投資額の20%をカット。5年以内の投資回収を見込んでいます。
業種別の影響と対応例
- 小規模オフィス(月間3,000kWh使用):2025年度の再エネ賦課金負担は月額12,000円。前年より1,530円増加。
- 中規模工場(製造業)(月間50,000kWh使用):月額20万円、年間で25,500円増加。
- 大型商業施設(月間500,000kWh使用):月額200万円、年間で255,000円増加。
これらの企業では、電力契約の見直しや、省エネ投資、自家消費型太陽光発電の導入など、再エネ賦課金の負担増に対する具体的な対策が進められています。
企業の主な対策
- 自家消費型太陽光発電の導入:電力会社からの購入電力量を減らすことで、再エネ賦課金の負担を直接軽減。
- 再エネ電力の優先利用:再生可能エネルギーを供給する電力プランを選択し、長期的なコスト安定化を図る。
- エネルギー購入の最適化:再エネと従来電力のバランスを見直し、全体の電力コストを抑制。
- 自治体補助金の活用:設備投資の初期負担を軽減し、投資回収期間を短縮。
再エネ賦課金の上昇は、企業の経営コストに大きな影響を及ぼしています。特に電力消費量の多い製造業や商業施設では、年間数十万円から数百万円単位のコスト増となるケースもあります。自家消費型太陽光発電の導入や、電力契約の見直しなど、再エネ賦課金負担を抑えるための戦略的な対策が広がっています。
出典:株式会社Hyc「2025年度の再エネ賦課金は3.98円に上昇 電気代への影響は?」
https://hybridcompany.co.jp/column/1727/
出典:株式会社Hyc「再エネ賦課金が2025年に上昇?電気料金はどうなるのか」
https://hybridcompany.co.jp/column/1715/
出典:丸紅新電力「電力自由化時代における企業の最適な電力選択戦略とは?」
https://denki.marubeni.co.jp/column/liberalization/
9. 賦課金制度の課題と今後の展望
再エネ賦課金の増加に伴い、国民負担の増大や制度の持続可能性について社会的議論が活発化しています。特に、賦課金負担が家計や企業の競争力に与える影響が懸念されています。
一方で、FIT制度開始から10年以上が経過し、買取期間を満了する「卒FIT」の再エネ電源が増加しています。これらの電源をどう活用していくか、また市場統合を進めるFIP制度への移行をどう進めるかが課題となっています。
政府は第6次エネルギー基本計画において、2030年度の再エネ比率を36〜38%とする野心的な目標を掲げています。また、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、再エネのさらなる導入拡大と同時に、国民負担の抑制も重要課題としています。
このバランスを取るため、以下のような政策が検討・実施されています:
- 再エネ発電コストの低減に向けた競争促進
- 系統制約の克服に向けた送電網の整備・運用改善
- 蓄電技術の開発・普及による変動電源の調整力強化
- 市場メカニズムを活用した再エネの自立化促進
これらの取り組みにより、将来的には再エネ賦課金への依存度を下げつつ、再エネ導入を進める方向性が示されています。
出典:経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の買取価格等と2025年度の賦課金単価」
URL:https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250321006/20250321006.html
10. まとめ
再エネ賦課金は再生可能エネルギー普及の重要な財源であると同時に、企業経営に大きな影響を与える要素となっています。企業のサステナビリティ担当者や経営層が押さえるべきポイントは以下の通りです:
- 賦課金単価は当面上昇傾向が続き、2030年代前半まで増加する見通しであること
- 電力使用量に比例して負担が増えるため、省エネ対策が直接的な負担軽減につながること
- 電力多消費事業者向けの減免制度があり、条件を満たせば大幅な負担軽減が可能であること
- 自家消費型再エネ導入など、長期的視点での投資判断が重要であること
- 賦課金負担を単なるコストではなく、サステナビリティ戦略の一環として捉えること
今後のエネルギー政策や電力市場の変化を注視しながら、自社の事業特性に合わせた最適な対応策を検討することが重要です。再エネ賦課金の負担増加は避けられない現実ですが、それを契機として省エネや再エネ導入を加速させ、持続可能な企業経営へと転換していくことが、長期的な競争力維持につながるでしょう。