2025年4月から始まる!新物流二法改正のポイントと対応

2025年から2027年にかけて施行される新物流二法の改正は、日本の物流業界に大きな変革をもたらします。この改正は、荷主や物流事業者に対して新たな義務を課し、積載効率の向上やCO2排出削減を目指した取り組みを促進します。
2025年4月1日の施行を皮切りに、特定事業者の指定、トラックや倉庫の管理状況の把握、さらには中長期計画の提出などが求められます。本記事では、改正内容のポイントや改正の目的や背景について詳しくご紹介します。

2025年~2027年にかけての新物流二法改正の流れ
新物流二法の改正は以下の流れで実施されます。

出典:株式会社アスア 「新物流二法」施行目前!積載効率の最適化で実現するカーボンニュートラルと物流改革ウェビナー
まず、2025年4月1日に法律の施行が実施され、基本方針、荷主・物流事業者等の努力義務・判断基準、判断基準に関する調査・公表などが実施されます。
2025年秋ごろには、判断基準に関する調査・公表が実施されます。2025年の改正では特定事業者の指定に向け、荷主には取り扱い貨物重量の把握、トラックは車両台数の把握、倉庫は保管量の把握をすることが求められるようになります。
2026年4月に想定されている法律の施行は、特定事業者の指定や中長期計画の提出・定期報告、物流統括管理者(CLO)の選任などが改正される見込みです。2026年4月末には特定事業者の届け出~指定手続に関する改正が実施され、荷主は指定後速やかに物流統括管理者の選任届出を出すよう改正される見通しです。
2026年10月末には中長期計画の提出、2026年秋ごろには判断基準に関する調査・公表の実施が想定されており、2026年の改正では定期報告に向けた実施状況の把握と荷待ち時間等の計測が求められるようになります。
2027年7月末には、定期報告の提出が想定されています。

特定荷主の算定方法と報告内容
荷主が自社の取扱貨物の重量を把握している場合は、当該重量の合計重量を自社の取扱貨物の重量として 基準重量(9万トン(予定))と比較する必要があります。一方で、輸送量を容積で把握している 多品目の受取りが主である等の特殊性を有する業種においては、重量を把握することに多大なコストがかかることが想定されるため、重量の算定に当たっては下記の算定方法を用いることを可能とします。
- 商品マスタ等において重量のデータを集計することが可能な場合にあっては、当該システムに登録されている重量を元に換算する
- 容積を把握している場合においては、 1立方メートルあたり280kgとして換算する
- 輸送するトラックの最大積載量を貨物の重量として換算する
中長期計画・定期報告の記載内容
中長期計画は作成期間は毎年度提出することを基本としていますが、計画内容に変更がない限りは5年に1度提出でよいとされています。記載内容は実施する措置、実施する措置の具体的な内容・目標等、実施時期などの記載が必要です。
定期報告の内容は、事業者の判断基準の遵守状況 (チェックリスト形式)、判断基準と関連した取組に関する状況 (自由記述)、荷待ち時間等の状況について記載が必要です。
荷待ち時間等の状況は、取組の実効性の確保を前提としてサンプリング等の手法を許容するか、荷待ち時間等が一定時間以内の場合には報告省略が可能などの計測方法があります。
提出時期は、指定を受けた年の翌年度7月末日、初年度のみ10月末日になります。中長期計画の様式は、運転者の荷待ち時間等の短縮に関する計画内容を記載し、積載効率、荷役等時間も同様の欄を設けることが必要です。
実施措置 | 計画内容(具体的な措置の内容、 目標等) | 実施時期 |
例) トラック予約受付システムの導入 | 例) 全拠点にトラック予約受付システムを導入して荷待ち時間を短縮し、1運行あたりの荷待ち時間等の平均時間を90分以内とする。 | 例) 2026年~2030年 |
その他運転者の荷待ち時間等の状況に関する事項及び参考情報には上記で記入した計画や計画内容の参考情報等を記入します。例えば以下のような内容を記載します。
- トラック予約受付システムの導入においては正しい活用の仕方を社内に周知し、 敷地周辺でトラックドライバーが待機することの無いように、社内において徹底させる。
- 製造部門とも連携し、バースのキャパシティ以上のトラックの納品が必要とならないよう密に連携を図る。
その他には以下のような記載欄があり、それぞれの措置や対象施設、計測結果などを記載する必要があります。


新物流二法の2029年3月までのKPI
新物流二法のKPIは2029年3月末までで設定されており、5割の運行で1運行当たりの荷待ち・荷役などの時間を計2時間以内に削減することと、5割の車両で積載効率50%の実現が掲げられています。
新法の施行時には定期報告の内容に「荷待ち・荷役時間」に加え、「積載効率」においても定量的な実績の報告が求められる可能性が高いことが想定されています。
積載効率の可視化とカーボンニュートラル
新しい 「物流効率化法」 (物資の流通の効率化に関する法律)は、令和7年2月18日 (火) 施行令和7年4月1日 (火)に公布され、貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化の推進に関する基本的な方針が定められました。
CO2排出量は、トラック輸送の効率化や共同輸配送、モーダルシフトの推進等を通じて、脱炭素社会の実現に寄与することが求められるようになりました。
積載効率については、令和 10 年度までに全トラック輸送のうち5割の車両で積載効率50%を目指し、 全体の車両で積載効率44%への増加を実現することが定められました。トラック輸送1運行当たりの輸送効率の向上に当たっては、重量ベースだけでなく容積ベースでも改善を図ることが望ましいとされています。
また、特定荷主は計画及び報告が義務化され、複数荷主の貨物の積合せ、配送の共同化、帰り荷 (復荷)の確保に向けた適切なリードタイムの確保や、運行効率向上のための発送量・納入量の適正化等により、トラックの積載率の向上等を図ることが求められるようになりました。これにより、運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の状況並び、効率化のために実施した取組及びその効果を適切に把握することが必要になりました。

改正省エネ法
改正省エネ法(正式名称:「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」)は、2050年カーボンニュートラル目標や2030年の温室効果ガス削減目標を達成するため、2023年4月に施行されました。この改正では、従来の「化石エネルギー」に限定された枠組みを拡大し、「非化石エネルギー」も含むすべてのエネルギーを対象とした合理化や転換が求められるようになりました。
改正省エネ法の主なポイントは、エネルギー使用の合理化と非化石エネルギーへの転換を強調しています。具体的には、化石エネルギーに加え、非化石エネルギー(再生可能エネルギーや水素等)も含めたすべてのエネルギー使用について、効率的な利用が求められます。特定事業者には、非化石エネルギーへの転換目標に関する中長期計画の作成と、使用状況の定期報告が義務付けられます。
また、自家消費型再生可能エネルギーや水素などの導入拡大が奨励されています。さらに、電気需要の最適化(ディマンドリスポンス:DR)が導入されました。これは、再生可能エネルギーの供給変動に対応するための仕組みで、「上げDR」では再生能エネルギーが余剰な際に電力需要を増加し、「下げDR」では電力需給が逼迫した際に需要を抑制します。特定事業者はこれらの実績報告も求められます。
また、法律名も「省エネ法」から「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」に改称されました。これにより、省エネのみならず、非化石エネルギーへの移行も明確な目標となっています。
この改正は、世界的な気候変動対策やロシア・ウクライナ情勢によるエネルギー危機を受け、日本国内でも持続可能な社会構築と経済強靭性向上が求められています。改正省エネ法は従来以上に包括的かつ戦略的な枠組みへと進化し、企業や事業者はより積極的な省エネ・脱炭素対策を求められる一方で、再生可能エネルギーや新技術導入による競争力強化も期待されています。

出典:株式会社アスア 「新物流二法」施行目前!積載効率の最適化で実現するカーボンニュートラルと物流改革ウェビナー
運輸部門におけるCO2排出量
日本の各部門におけるCO2排出量は運輸部門(自動車、船舶等)が1億9,180万トンで18.5%と最も高い比率です。
そのうち、自家用乗用車が8,609万トンで44.9%、営業用貨物車が4,142万トンで21.6%、自家用貨物車が3,150万トンで16.4%を占めています。また、自動車全体では運輸部門の85.8%、旅客自動車は運輸部門の47.8%、貨物自動車は運輸部門の38.0%を占めています。

出典:株式会社アスア 「新物流二法」施行目前!積載効率の最適化で実現するカーボンニュートラルと物流改革ウェビナー
運輸部門のCO2排出量は基準年度の2013年の14.09億トンから削減が必要で、2020年度の確報値は11.50億トンで2013年度比で18.4%減少しました。
また、2021年4月22日の温対本部・気候サミットで新たな2030年度と2050年度の目標が定められ、2030年には2013年度比46%減、2050年までに排出実質ゼロの実現を目指すことになりました。

出典:株式会社アスア 「新物流二法」施行目前!積載効率の最適化で実現するカーボンニュートラルと物流改革ウェビナー
カーボンニュートラルへの取り組みは、2050年までに二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにして、脱炭素社会を実現することが必要です。人間の活動により排出されるCO2と森などが吸収するCO2をほぼ同じにする必要があります。
地球温暖化対策計画温室効果ガスの排出削減目標は以下の通りです。

改正省エネ法では、エネルギー消費原単位を中⾧期的にみて年平均1% 以上低減させることを目標にしています。正確に把握するには、みなし積載率・みなし燃費ではなく、実積載率、実燃費を活用した算出が必要です。

物流効率化法と改正省エネ法は、積載率・積載効率の改善が荷物当たりのCO2排出量の改善につながるため、積載効率の把握が必要です。トラック一台当たりの料金体系の車建は、積載率・積載効率の把握をしていないケースが多いです。また、パレット・段ボール1個当たりの料金体系である個建は積載率・積載効率の把握を必ず実施しています。
まとめ
新物流二法の改正は、荷主や物流事業者に新たな義務を課し、物流業界の効率化と環境負荷の軽減を目指す重要なステップです。2025年から2027年にかけて実施される一連の改正により、特定事業者の指定や中長期計画の提出、定期報告の義務化などが進められます。これらの改革は、物流業界の積載効率やエネルギー消費の最適化、CO2排出量の削減に貢献し、持続可能な社会の実現に寄与します。
また、改正省エネ法との連携により、再生可能エネルギーの導入や電力需給の最適化も進められます。運輸部門のCO2排出量削減を目指し、積載効率の向上や効率的なトラック輸送の推進が求められています。特定事業者は、実積載率や燃費を正確に把握し、効果的な取組みを進める必要があります。これにより、物流業界全体が環境に優しい運用へと転換し、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた重要な役割を果たすことが期待されます。
次の記事では本記事で紹介した法対応の対応として、積載効率の可視化とカーボンニュートラルに対応した実例をご紹介します。