鹿島市で広がるエコの輪「省エネアクション2025夏」現地レポート - CO2可視化削減プラットフォーム「EcoNiPass」情報サイト
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鹿島市で広がるエコの輪「省エネアクション2025夏」現地レポート

「お父さん、見て、電車が動いた!」

 手回し発電で小さな電車を走らせる「ソーラートレイン」の前で、男の子が目を輝かせながら叫ぶ。自分の手で電気を生み出し、それが目の前で動き出す。そんな“目に見える体験”が、子どもたちの心に残る。

 2025年7月13日、佐賀県鹿島市で開催された「省エネアクション2025夏」。市民文化ホールを会場に、体験やワークショップ、展示、クイズなどを通じて、環境やエネルギーについて楽しく学べるイベントが開かれた。

 今回の取り組みは、地球温暖化に対する適応策として企画されたもの。
今後ますます暑くなる夏を見据え、公共施設を開放して「涼しい場所をシェアしながら遊ぶ」という、鹿島市初のクールシェアの試みでもあった。

 家庭のエアコン使用を減らし、みんなで楽しみながら節電やCO₂削減につなげていく—
そんな想いに賛同した企業が、ブースを構えてイベントを支えていた。

 今回、エコニパス編集部は、鹿島市との連携をきっかけにこのイベントに参加。実際に会場を訪れ、その取り組みを取材した

 会場では、来場者の多くがスマートフォンを手に、各ブースを回りながらQRコードを読み込んでいた。これは「エコポイント」と呼ばれる取り組みだ。
歩いて来場したことや公共交通機関の利用、エアコンのオフなどの行動を申告すると“エコポイント”が付与される仕組み。
さらに会場内の各ブースにもQRコードが設置されており、読み込むたびにポイントが加算され、最終的に景品と交換できるようになっていた。

 ポイントを集めながら各ブースを回ることで、来場者は自然と展示や説明に足を止め、環境への取り組みに触れていく。
このように、楽しみながらポイントを集める行動自体が、環境を意識するきっかけになっていた

 この新しい仕組みの背景には、鹿島市が今年春から導入したCO₂見える化ツール「エコニパス」がある。個々の行動によるCO₂削減量を可視化できるようになったことで、こうした“行動を促すしくみ”も現実のものとして動き出した。

 会場には、エコニパスの紹介ブースも設けられており、クイズ形式で楽しみながら環境への理解を深められる工夫がされていた。「1秒間に失われる森林面積は、ブラックサンダー何個分?」「1秒で溶ける氷1万トンは、アイス何本分?」——そんな問いかけに、子どもたちは真剣な表情で頭をひねりながら、一生懸命に考えていた。

 身近なお菓子にたとえられた大きな数字は、想像しやすく、インパクトも抜群。中には正解を当てて得意げな表情を見せる子どももいて、その様子に周りの大人たちが「すごいね」と笑顔で声をかける場面も。
そんな何気ないやりとりが、子どもたちにとっても嬉しい体験になっていた。その場の会話が自然と広がり、環境問題が“むずかしいこと”ではなく、“一緒に考えられること”として、来場者の間にやさしく共有されていく——そんな温かな光景が広がっていた。

画像3 エコポイント画面

 会場内では、手を動かしながら発電のしくみを体験できるコーナーが目立った。

 「発電のしくみを学ぼう いろいろな発電」のブース(協力:九州電力)では、発電のしくみや電気のつかい方について、体験とクイズを通じて楽しく学べる工夫がされていた。

 クイズや展示パネルでは、火力・風力・太陽光などさまざまな発電方法や、それらをどう組み合わせて使うかといった「エネルギーミックス」の考え方にも触れられていた。

 手回し発電機でLEDと豆電球の違いを確かめたり、うちわを使って風力発電を体験したりと、実際に自分の力で電気をつくってみるコーナーも。「電気をつくるのは思ったより大変」という実感が、子どもたちにも自然に伝わっていた。

 電気は“新鮮なもの”。つくったそばから使われるからこそ、発電方法のバランスや効率も大切になる。展示と体験を行き来する中で、電気のことを少し深く考える、そんな時間が流れていた。

 「環境にやさしいランタンづくり」(協力:パナソニック株式会社エレクトリックワークス社)も人気のワークショップだった。太陽光パネルと蓄電池、LEDを使ってつくるこのランタン。工作の前には、電気やエコについての簡単なレクチャーもあり、子どもも大人も、楽しく手を動かしながら自然と環境への意識を深めていた。

 出来上がったランタンを手にした子どもが「楽しかった」と笑顔を見せてくれた。少し難しそうにも見えた制作工程の中で、自然と集中し、学びながら取り組む姿が印象的だった。

 このワークショップを手がけた財木さんは、冒頭の「ソーラートレイン」体験のブースにも携わっており、「発電ってこんなに大変。だからこそ電気を大切にしてほしい」と語っていた。

 「名刺づくり体験」(協力:NTT西日本佐賀支店)では、子どもたちが「自分だけの名刺づくり」に挑戦していた。使われているのは、NTTグループが自社ファームで使った段ボールをリサイクルし、手すき紙として再生した特別な紙。

 好きなイラストを描いたりしてオリジナルの名刺を完成させるこの体験。一見するとただの“ものづくり”のようだが、使われている紙には環境への取り組みが込められている。

 何気なく触れた身近なものが、実は環境に配慮された素材だった——。 そうした“さりげない接点”を増やしていくことこそ、環境への意識を生み出す第一歩になるのかもしれない。

画像6 エコな紙でつくった名刺

 「家庭向け発電設備の展示」(協力:宮園PLUSホームズ/株式会社宮園電工)では、太陽光発電や蓄電池などの機器に加え、鹿島市の脱炭素に向けた補助金も紹介されていた。

 来場者は、実際のサイズ感や設置の様子に触れることで、環境への取り組みが、日常の中でどう実現できるのかを、具体的に思い描くきっかけとなった。こうした展示もまた、環境を“自分ごと”として考えるヒントになっていた。

 イベントの最後、企画者である鹿島市役所の江島さんはこう語ってくれた。

「省エネをきっかけに、環境を考えるようになってもらえたらうれしい。何がきっかけになるかわからないから——。今日の体験が、少しでもその一歩になればと思っています。」

 江島さんは、今後も今回のようなイベントを市内各地で開催し、体験の場を増やしていきたいと語っていた。

 鹿島市はこれまでも、SDGs未来都市として環境への取り組みを続けてきた。そこに今年、「エコニパス」というCO₂見える化ツールが加わり、行動を促す新たな仕掛けや市民との接点づくりが動き出した。

 このイベントは、その連携の“はじまり”ともいえる。体験しながら考える。遊びながら知る。

 未来のまちづくりは、そんな“足を運んだ一歩”から、始まっているのかもしれない。

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