1. HOME
  2. ブログ
  3. 法律
  4. 2025年の新物流二法改正の前に知るべき物流二法の歴史と改正を徹底解説!

2025年の新物流二法改正の前に知るべき物流二法の歴史と改正を徹底解説!

2025年4月1日に新物流二法が施行されました。これにより、日本の物流業界は大きな転換期を迎えています。慢性的なドライバー不足や「2024年問題」への対応として、労働環境の改善や輸送の効率化を目的とした規制が強化されました。改正では、時間外労働の上限規制や適正運賃・料金の確保、荷主との契約見直しなどが求められ、企業の対応が急務となっています。

本記事では、新物流二法改正に至るまでの物流二法の歴史と改正のポイントをわかりやすく解説します。

物流二法とは

新物流二法は「物資の流通の効率化に関する法律(物効法)」と「貨物自動車運送事業法」のことを指します。以下でそれぞれの法律について解説します。

物資の流通の効率化に関する法律(物効法)の概要

物資の流通の効率化に関する法律(通称:物効法)は、物流業務の効率化と環境負荷の軽減を目的として制定されました。輸送・保管・荷さばき・流通加工などを一体的に行う事業に対し、モーダルシフトや共同配送などの計画に基づき、認定制度による支援(補助金・税制優遇等)が用意されていました。

貨物自動車運送事業法の概要

貨物自動車運送事業は、「一般貨物自動車運送事業」と「特定貨物自動車運送事業」の2つに分類されていました。一般貨物自動車運送事業を行うには許可が必要とされ、一方の特定貨物自動車運送事業は特定の荷主に対する輸送を扱い、免許制が適用されていました。

一般貨物自動車運送事業は公益性が高いため許可制とされ、特定貨物自動車運送事業は自家用輸送の代行という性質上、より簡易な免許制が採用されていました。かつては営業区域に制限が設けられていましたが、法改正により全国での営業が可能となりました。

また、運転手の安全と健康を確保するため、運行時間や休憩時間に関する規制も定められていました。具体的には、連続運転時間は最大4時間とされ、それまでに少なくとも1回10分以上、合計30分以上の休憩を取ることが義務付けられていました。

改正前の貨物自動車運送事業法の目的

改正前の貨物自動車運送事業法は、貨物自動車による輸送の安全を確保し、貨物自動車運送事業の健全な発達を図ることを目的としていました。これには、許可制や行為規制などが含まれていました。

物流二法の改正の歴史

物流二法は1990年(平成2年)にも改正が実施されました。その際には規制緩和が実施されました。各法律の改正と背景についてご紹介していきます。

出典:株式会社アスア 「新物流二法」施行目前!積載効率の最適化で実現するカーボンニュートラルと物流改革ウェビナー

貨物自動車運送事業法の1990年の改正内容

貨物輸送の規制緩和による競争の促進が行われました。貨物輸送業界における競争を活性化するため、トラック事業に関する規制が緩和されました。まず、従来の免許制であったトラック事業の参入規制が許可制へと移行し、地域ごとの参入制限が撤廃されました。これまで区別されていた路線トラック事業と区域トラック事業の免許制度が統一され、事業形態にかかわらず自由な運営が可能となりました。

また、運賃制度についても見直しが行われ、従来の認可制から事前届出制へと変更され、価格設定の柔軟性が向上しました。

貨物運送取扱事業法の1990年の改正内容

運送取扱事業の制度簡素化と合理化が行われました。各輸送手段ごとに規定されていた運送取扱事業の制度が見直され、よりシンプルで効率的な仕組みへと改正されました。利用運送事業は許可制とされ、一定の基準を満たした事業者のみが運営できるようになりました。一方、運送取次事業については登録制が導入され、より手続きが簡素化されました。

また、運賃制度についても変更が行われ、従来の認可制から事前届出制へと移行し、価格設定の自由度が高まりました。

2010年~2020年代の物流二法改正の歴史

2010年~2020年にかけても改正が実施され、この時には規制が強化される形で変更が行われました。主な変更点は以下の通りです。

2010年代:規制緩和による競争激化と課題で対荷主規制の強化

物流二法の規制緩和により、新規参入が増加し運送会社の数が急増しました。それに伴い競争が激化し、業界は二次受け・三次受け・四次・五次といった多重構造化が進みました。この結果、小規模の運送会社の収益は悪化しドライバーの賃金水準も低下しました。

さらに、荷主からの附帯作業の押し付けや長時間労働の問題が深刻化し、業界全体で是正の必要性が叫ばれるようになりました。これを受け、対荷主規制の強化が進められました。

出典:株式会社アスア 「新物流二法」施行目前!積載効率の最適化で実現するカーボンニュートラルと物流改革ウェビナー

2020年代:「働き方改革」と新物流二法の施行

政府は「働き方改革」の一環として、ドライバーの時間外労働を年間960時間に制限する規制を導入しました。2024年4月から適用され、新たな物流二法が施行されることとなりました。これにより、労働環境の改善と業界の健全な発展が期待されました。

物資の流通の効率化に関する法律(新物効法)

改正前の「物資の流通の効率化に関する法律(新物効法)」は、実際には「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」として知られていました。この法律は、物流業界の効率化を推進するために制定され、以下の内容を含んでいました。

改正前の物効法の概要

制定の目的には日本の産業の国際競争力を強化し、消費者の多様化・高度化するニーズに対応するとともに、環境負荷の低減、新たな支援策が講じる必要がありました。具体的な支援内容としては、輸送・保管・荷さばき・流通加工といった流通業務を一体的に実施する事業に対し、輸送網の集約やモーダルシフト、輸配送の共同化を促進する計画の認定や支援措置が設けられていました。

また、事業者が流通業務の一体化や輸送の合理化を目的とした事業計画を国に申請し、認定を受けることで、経費補助や税制特例措置、融資などの支援を受けられる認定制度も整備されていました。さらに、労働力不足の深刻化や、荷主・消費者のニーズの高度化・多様化に対応するための支援策も含まれていました。

改正の背景と改正内容

改正前の法律は、物流業界の課題に対応するために定められましたが、2024年問題や軽トラック運送業による事故増加に対処するために、改正が行われました。改正により、全ての荷主および物流事業者には、荷待ち時間や荷役時間の短縮に取り組むとともに、積載効率の向上に努めることが求められるようになりました。

出典:株式会社アスア 「新物流二法」施行目前!積載効率の最適化で実現するカーボンニュートラルと物流改革ウェビナー

一定規模以上の事業者(特定荷主および特定事業者)に対しては、全体への寄与度がより高いと認められる大手の事業者が指定されるようにそれぞれ以下の指定基準値が設定されました。

特定荷主・特定連鎖化事業者取扱貨物の重量9万トン以上(上位3,200社程度)
特定倉庫業者貨物の保管料70万トン以上(上位70社程度)
特定貨物自動車運送事業者等保有車両台数150台以上(上位790社程度)

また、中長期的な計画を策定し定期的な報告を行う義務が課され、物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられました。中長期計画は、毎年度提出することを基本としつつ、計画内容に変更がない限りは5年に1度提出でよいとされました。記載内容には、実施する措置、実施する措置の具体的な内容・目標等、実施期間などの策定が求められました。

また、定期報告では記載内容に以下の記載が必要でした。

  • 事業者の判断基準の順守状況(チェックリスト形式など)
  • 取り組みの実効性の確保を前提としてサンプリング等の手法を許容
  • 荷待ち時間等が一定時間以内の場合には報告省略が可能 など

トラックドライバーの運送や荷役作業の効率化を推進することは、労働環境の改善や物流全体の最適化につながる重要な取り組みです。この効率化を進めるにあたっては安全性の確保を最優先としながら、荷主、物流事業者、施設管理者など、物流に関わる様々な関係者が協力することが不可欠です。

トラックドライバーの運送・荷役等の効率化の推進の意義・目標

こうした取り組みの一環として、令和10年度までに以下の目標達成が掲げられました。

まず、 トラックドライバー1人当たりの年間拘束時間を125時間短縮することを目標とし、1回の受け渡しごとの荷待ち時間などを 1時間以内に抑えることを目指します。これにより、ドライバーの負担軽減と労働環境の改善を図ることが求められました。

さらに、トラックの積載効率を向上させ、物流の効率化を推進します。具体的には、 全体の車両で積載効率を44%に引き上げるとともに、特定荷主においては 50%の積載効率を実現することを目標としています。これらの取り組みにより、ドライバーの労働環境の改善だけでなく、輸送コストの削減や環境負荷の低減といった効果も期待されました。

物資の流通の効率化に関する法律(物効法)の算定方法

物効法は以下の式で算定されます。

積載率 =積載重量÷最大積載量重量
積載効率=積載率×実車率 ※
※実車率(実車走行距離÷区間走行距離)

以下の事例の場合には、上記の式でそれぞれ積載効率を割り出し、それを平均し55%と算定します。

出典:株式会社アスア 「新物流二法」施行目前!積載効率の最適化で実現するカーボンニュートラルと物流改革ウェビナー

物効法の判断基準のポイント

物効法の判断基準のポイントは主に3点あります。

1点目に積載効率の向上などがあり、以下の要素が判断ポイントになりました。

  • 複数の荷主の貨物の積合せ、 共同配送、 帰り荷の確保等のための実態に即した リードタイムの確保や荷主間の連携
  • 繁閑差の平準化や納品日の集約等を 通じた発送量・納入量の適正化
  • 配車システムの導入等を通じた配車・ 運行計画の最適化等

2点目に荷待ち時間の短縮があり、トラック予約受付システムの導入や混雑時間を回避した日時指定等による貨物の出荷・納品日時の分散等※が判断ポイントになりました。

※トラック予約受付システムについては、単にシステムを導入するだけでなく、 現場の実態を踏まえ実際に荷待ち時間の短縮につながるような効果的な活用を行う

3点目に荷役等時間の短縮があり、以下が判断ポイントになりました。

  • パレット等の輸送用器具の導入による荷役等の効率化
  • 商品を識別するタグの導入や検品・返品水準の合理化等による検品の効率化
  • バース等の荷捌き場の適正な確保による荷役作業のための環境整備
  • フォークリフトや荷役作業員の適切な配置等によるトラックだライバーの負担軽減と積卸し作業の効率化等

荷主等の取組状況に関する調査・公表

荷主等の判断基準については、物流事業者を対象として定期的なアンケート調査を行い、取組状況を把握します。これらの回答の点数の高い者・低い者も含め公表 (点数の低い者の公表を検討する際は、ヒアリング等により適切に実態を把握)されます。

まとめ

本記事では、物流二法の歴史と改正のポイントを解説しました。

新物流二法は1990年に初の大幅改正が行われ、参入規制の緩和や運賃制度の自由化が進みました。これによりトラック事業への新規参入が容易になり、競争が活性化しましたが、同時に業界の多重下請け構造が進行し、労働環境の悪化を招きました。2010年代にはこの弊害に対処するため、対荷主規制の強化が行われ、ドライバーへの過重労働や附帯作業の是正が進められました。

2020年代に入ると「働き方改革」の流れの中で、ドライバーの時間外労働上限が設定され、2024年問題への対応として新たな物流二法が改正されました。これにより、適正運賃の確保や中長期計画の提出義務など、事業者と荷主双方に実効的な取り組みが求められるようになりました。

次のブログでは、2025年4月1日に施行される新物流二法の改正内容についてわかりやすく解説します。

関連記事

ガイド集

実データを用いたCFP算定完全ガイド 
By.EcoNiPass
資料ダウンロード

CO2排出量算出の法改正と影響ガイド 
By.EcoNiPass
資料ダウンロード

初心者でも失敗しない!CO2排出量管理システムの選び方 
資料ダウンロード

CFP算定までの基本ガイド
資料ダウンロード

2025年4月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  
NEW POST