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【簡単解説シリーズ】EUDR(EU森林破壊規制)とは?企業が知っておくべき定義から最新動向を徹底図解

■AIによる記事の要約

 EUDR(EU森林破壊規制)は、2025年より段階的に施行されるEUの新たな環境規制で、牛肉・大豆・パーム油・木材など7商品群を対象に「森林破壊フリー」を義務付けます。企業は地理情報・衛星画像などを用いたデューデリジェンスや報告体制の整備が必要で、違反時には最大売上高の4%の罰金など厳しい制裁が科されます。規制は中小企業も対象で、ESG対応や競争力強化の観点からも早期対応が求められます。

目次

 EUDR(EU森林破壊規制)は、2025年から本格施行される新たな環境規制として、多くの企業に影響を与える重要な制度です。本記事では、貿易・輸出入担当者、サプライチェーン管理者、環境コンプライアンス担当者向けに、EUDRの基本概念から実務対応まで詳しく解説します。

1. EUDR(EU森林破壊規制)とは – 基本概念から最新動向まで

1-1 EUDRの背景と重要性

 EU森林破壊規制(EUDR: EU Deforestation Regulation)は、商品の循環とサステナビリティを支える上で極めて重要な制度です。2023年6月29日に発効し、森林破壊や森林劣化に関与しない「森林破壊フリー」商品の供給が求められます。

 対象となる企業にとっては、貿易・調達構造の見直しが急務となっており、デューデリジェンス体制の構築とサプライチェーンの透明化が不可欠となっています。

1-2 なぜEUDRが必要になったのか

 世界的な森林破壊の進行は深刻な問題となっており、年間約1000万ヘクタールの森林が消失しています。EUは世界の森林破壊の約16%に関与しているとされ、この問題に対処するため包括的な規制が必要となりました。

 特に、EU Green Deal政策の一環として、2030年までにEUの環境負荷を大幅に削減する目標を掲げており、EUDRはその中核的な施策として位置づけられています。

2-1 EUDRとは何か – 正式名称と法的位置づけ

正式名称:「Regulation (EU) 2023/1115」、通称EUDR(EU Deforestation Regulation)
採択日:2023年5月31日
発効日:2023年6月29日

2-2 制定背景と目的

 EUDRは、EU Green Dealや2030年生物多様性戦略、Farm to Fork戦略の一環として、広範な森林破壊・劣化への対応を目的として開発されました。これらの戦略は、持続可能な経済成長と環境保護の両立を目指しており、EUDRはその具体的な実行手段として機能します。

2-3 従来規制との違いと革新性

 従来のEU木材規制(EUTR)は、木材を中心とした限定的な対応でしたが、EUDRは牛肉、コーヒー、パーム油など7商品群を対象とし、より包括的な規制となっています。

主な革新点

  • 対象商品の大幅な拡大
  • デューデリジェンス義務の明確化
  • 地理的位置情報の取得義務
  • リスクベースアプローチの導入

2-4 SDGsとの関連性

 EUDRは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)と密接に関連しています:

  • 目標13「気候変動対策」:森林破壊の防止による炭素固定機能の保護
  • 目標15「陸の豊かさを守る」:生物多様性の保護と森林生態系の維持
  • 目標12「持続可能な消費と生産」:責任ある調達の推進

出典https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2023/1115/oj/
出典https://environment.ec.europa.eu/topics/forests/deforestation/regulation-deforestation-free-products_en

3-1 対象商品(7商品群)の詳細

 EUDRは以下の7商品群とその派生商品を対象としています。

対象7商品群とその派生商品の相関図

EUDR対象7商品群と派生商品

EU森林破壊規制の対象となる商品とその関連製品の完全マップ

🐄
牛肉・皮革
Cattle (beef & leather)
派生商品
生肉 冷凍肉 加工肉 革製品 バッグ ベルト 革製家具
🍫
ココア
Cocoa
派生商品
カカオ豆 チョコレート ココアパウダー ココアバター 菓子類 飲料 アイスクリーム
コーヒー
Coffee
派生商品
生豆 焙煎豆 粉コーヒー インスタント 缶コーヒー コーヒー飲料 エスプレッソ
🌴
パーム油
Palm Oil
派生商品
食用油 マーガリン 化粧品 石鹸 バイオ燃料 加工食品 パン
🫘
大豆
Soy
派生商品
大豆油 大豆ミール 豆腐 納豆 醤油 味噌 飼料 豆乳
🌲
木材
Wood
派生商品
原木 製材 家具 建材 パルプ 合板 木製品
🏀
ゴム
Rubber
派生商品
天然ゴム タイヤ ゴム手袋 ゴムホース 靴底 工業用品 医療用品
EUDR対象商品の市場規模
7
対象商品群
数百
派生商品数
16%
EU関与森林破壊率
2025
大企業適用開始年


3-2 対象事業者の定義と責任範囲

オペレーター(Operator):EU市場に商品を「置く(place)」企業

  • 輸入業者
  • 国内生産者
  • 包装・加工業者

トレーダー(Trader):流通に関与する企業

  • 卸売業者
  • 小売業者
  • 物流業者

3-3 地理的適用範囲

 EUDRは、EU域内への流通・EUからの輸出すべてが対象となります。域外で生産された商品でも、EU市場に投入される場合は適用されます。

重要ポイント

  • 第三国での生産でも適用対象
  • EU域内での再輸出も対象
  • オンライン販売も含む

出典https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2023/1115/oj/
出典https://www.whitecase.com/insight-alert/10-key-things-you-still-need-know-about-new-eu-deforestation-regulation

4-1 段階的施行スケジュール

EUDRスケジュール・タイムライン図

EUDRスケジュール・タイムライン

EU森林破壊規制の重要な日程と企業への影響

2023年6月29日
EUDR発効
規制が正式に発効。準備期間の開始。ガイダンス文書の発行開始。
2025年12月30日
大企業義務開始
従業員500名以上または年間売上高1億ユーロ以上の企業に適用開始。
2026年6月30日
中小企業義務開始
すべての企業に適用拡大。6か月の猶予期間終了。完全施行開始。
2028年頃
規制レビュー
規制内容の見直し。対象商品の拡大や要件の変更を検討。
規制発効
大企業適用開始
中小企業適用開始
規制見直し

4-2 準備期間の活用

 2024年以降、欧州委員会は以下の支援を提供しています:

  • ガイダンス文書の発行
  • FAQ(よくある質問)の更新
  • デューデリジェンスシステム構築支援
  • セミナー・ワークショップの開催

4-3 移行措置と注意点

既存契約の取り扱い
EUDR発効前の契約でも、期限後の輸入には適用されます。移行措置の明示的な規定はないため、契約内容の見直しが必要です。

在庫商品の管理
EUTR下の扱いから、EUDR発効後はEUDRルールに準じるため、原産地情報の取得や供給元の再確認が実務上重要です。

出典https://environment.ec.europa.eu/topics/forests/deforestation/regulation-deforestation-free-products_en
出典https://www.whitecase.com/insight-alert/10-key-things-you-still-need-know-about-new-eu-deforestation-regulation

5-1 デューデリジェンス義務の詳細

 EUDRにおけるデューデリジェンスは、以下の要素から構成されます:

リスク評価

  • 2020年12月31日以降の森林伐採・劣化リスクの評価
  • 各仕入地の森林破壊リスクレベルの判定
  • 第三者情報の活用と検証

サプライチェーンの透明化

  • 供給チェーン全体の可視化
  • 加工・配送過程の追跡
  • 取引先との情報共有体制の構築

地理的位置情報の収集

  • 生産地の正確な経度緯度情報
  • 土地利用変更の履歴
  • 衛星画像による現状確認

5-2 森林破壊フリー証明の要件

 企業は以下の方法で「森林破壊フリー」を証明する必要があります:

衛星画像の活用

  • 高解像度衛星データの分析
  • 森林被覆変化の監視
  • 第三者による画像解析レポート

公的記録の確認

  • 政府機関による森林管理記録
  • 土地登記簿の確認
  • 環境許可書の取得状況

現地調査の実施

  • 定期的な現地監査
  • 地域コミュニティとの対話
  • NGOとの協力関係の構築

5-3 文書化・報告義務

必要書類の整備

  • 仕入先との契約書
  • 供給地の地番情報
  • 衛星画像データ
  • 第三者認証書類
  • Due Diligence Statement(DDS)

トレーサビリティの確保

  • EUDR情報登録システムへの登録
  • 電子的な情報提出システムの構築
  • データの長期保存体制

当局への報告手続き

  • 定期的な開示義務
  • 監視対象企業への年次報告
  • 異常事態発生時の緊急報告

5-4 第三者認証の活用方法

国際認証制度の活用

  • FSC(Forest Stewardship Council)認証
  • PEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification)認証
  • RTRS(Round Table on Responsible Soy)認証
  • RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)認証

認証活用のメリット

  • 監査負担の軽減
  • リスク評価の簡素化
  • 取引先からの信頼獲得
  • ブランド価値の向上

認証制度の限界

  • 認証取得に要する時間とコスト
  • 認証基準の地域差
  • 小規模生産者の参加困難

6-1 制裁措置の種類と内容

行政処分

  • 商品の輸入停止措置
  • 販売許可の取り消し
  • 事業活動の制限
  • 商品の市場からの回収命令

経済制裁

  • 罰金の支払い義務
  • EU売上高の最大4%までの課徴金
  • 損害賠償責任
  • 追加監査費用の負担

市場アクセス制限

  • EU市場からの排除
  • 輸出入ライセンスの停止
  • 取引先との契約解除リスク

6-2 ペナルティの算定基準

EU規制違反の分類と制裁措置

EU規制違反の分類と制裁措置

違反の重大性による分類

軽微な違反
文書不備、報告遅延など、手続き上の問題や軽度な規制逸脱
重大な違反
森林破壊商品の故意的な取り扱いなど、環境に直接的な影響を与える行為
悪質な違反
隠蔽行為、虚偽報告など、意図的な規制回避や不正行為

企業規模による差異

大企業
より厳格な制裁措置が適用され、社会的責任も重く問われます
中小企業
企業規模を考慮した一定の配慮措置が設けられています
初回違反
改善機会の提供により、教育的指導が重視されます

具体的金額例

制裁金シミュレーション
EU売上高40億円の企業の場合
最大1.6億円の制裁金が課される可能性があります

出典https://www.skadden.com/insights/publications/2024/10/the-eu-deforestation-regulation
出典https://climate-laws.org/document/regulation-eu-20231115-on-deforestation-free-products-1d92
出典https://www.preferredbynature.org/EUDR

7-1 食品・飲料業界への影響

コーヒー・ココア関連企業

  • 産地追跡システムの強化が必要
  • 小農との直接取引関係の構築
  • 認証コーヒー・ココアの調達拡大
  • アフリカ小農からの仕入れ減少傾向

食用油メーカー

  • パーム油サプライチェーンの見直し
  • RSPO認証油の調達拡大
  • 代替油脂の開発検討
  • マレーシア・インドネシア産地の精査

畜産・食肉関連企業

  • 牛肉・皮革の原産地証明整備
  • 牧場の衛星監視システム導入
  • ブラジル・アルゼンチン産地の管理強化
  • 飼料用大豆のトレーサビリティ確保

7-2 製造業界への影響

家具・建材メーカー

  • 木材調達の証明書類整備
  • FSC認証材の調達拡大
  • 違法伐採材の排除システム
  • 東南アジア産材の管理強化

自動車産業(ゴム部品)

  • タイヤ用天然ゴムの産地証明
  • タイ・ベトナム産ゴムの監査体制
  • 合成ゴムへの代替検討
  • サプライヤー管理の強化

化粧品・パーソナルケア

  • パーム油・大豆由来成分の精査
  • 原料サプライヤーの監査強化
  • 代替原料の開発投資
  • 認証原料の調達拡大

7-3 小売・流通業界への影響

輸入業者

  • DDSや位置情報の整備負担
  • 新規システム導入コスト
  • 人材教育・研修の実施
  • 取引先との情報共有体制構築

小売チェーン

  • サプライヤーへの要件伝達
  • 商品選定基準の見直し
  • 消費者への情報提供
  • プライベートブランドの管理強化
業界影響度マップ

業界影響度マップ

サプライチェーン対応の優先度可視化

影響度
対応難易度
容易
普通
困難
畜産・食肉
食用油メーカー
コーヒー・ココア
家具・建材
自動車(ゴム)
化粧品・パーソナルケア
輸入業者
小売チェーン
最優先対応(高影響・高難易度)
中優先対応(中影響・中難易度)
段階的対応(低影響・低難易度)

Q1: 中小企業も対象になるのか?

回答:はい、中小企業も対象となります。適用開始は大企業より6か月遅れの2026年6月30日ですが、完全に対象外ではありません。企業規模に関わらず、対象商品を取り扱う企業はすべて対応が必要です。

Q2: 既存在庫はどう扱われるのか?

回答:EUDR発効後は、既存在庫であってもEUDR下の要件が適用されます。輸入時点での情報整備が不可避となるため、在庫商品についても原産地情報の確認と整備が必要です。

Q3: 認証がない場合の代替手段は?

回答:第三者認証がない場合でも、以下の方法でリスクを証明することが可能です:

  • 衛星データの活用
  • 第三者監査報告書
  • 現地調査記録
  • 政府機関の証明書
  • NGOとの協力による証明

Q4: 違反した場合の具体的なペナルティは?

回答:最大でEU売上高の4%までの罰金が課され、輸入停止などの行政処分も併せて実施されます。違反の重大性や企業規模により制裁内容は異なりますが、重大な違反の場合は市場からの排除リスクもあります。

Q5: 他国でも類似規制が導入される予定は?

回答:米国・カナダなどで森林関連規制強化の動きが確認されています。また、多国間貿易協定に環境条項が含まれるなど、EUDRは国際的な潮流となりつつあります。

Q6: デューデリジェンスシステムの構築にはどの程度の期間が必要か?

回答:企業規模や取り扱い商品の複雑さにより異なりますが、一般的に6か月から1年程度の準備期間が必要とされています。早期の準備開始が推奨されます。

Q7: 認証取得のコストはどの程度か?

回答:認証の種類と企業規模により大きく異なりますが、初回認証で数十万円から数百万円、年間維持費用として数万円から数十万円程度が一般的です。

9-1 EUDRの発展可能性

対象商品の拡大
2025年中に、その他の森林エコシステムに影響を与える商品の対象範囲拡大が検討されています。候補として、以下の商品が挙げられています:

  • 綿花
  • トウモロコシ
  • 鉱物資源
  • 養殖魚

規制の強化
2028年頃のレビューにおいて、以下の変更が想定されます:

  • デューデリジェンス義務の詳細化
  • 報告要件の追加
  • ペナルティの厳格化
  • 手続きの簡素化措置

9-2 他地域への影響と国際的な動向

米国・カナダ

  • 森林関連輸入規制の強化検討
  • デューデリジェンス義務の導入議論
  • 二国間協定での環境条項追加

アジア太平洋地域

  • オーストラリアのEUからの「低リスク国」認定
  • 日本の森林関連法制度への影響
  • 韓国・シンガポールでの類似規制検討

9-3 国際的な標準化への影響

 EUDRは国際的な森林保護標準の確立に向けた重要な一歩となっており、以下の影響が期待されます:

国際機関での議論活性化

  • FAO(国連食糧農業機関)での標準化議論
  • WTO(世界貿易機関)での貿易ルール調整
  • G7・G20での環境政策協調

民間主導の取り組み拡大

  • 業界団体による自主的な取り組み
  • 企業間連携による標準化
  • 投資家からのESG要求強化

10-1 重要ポイントの再確認

施行スケジュール

  • 大企業:2025年12月30日から義務開始
  • 中小企業:2026年6月30日から義務開始
  • 準備期間の有効活用が重要

必要な対応

  • Due Diligence Statement(DDS)の整備
  • 地理的位置情報の収集
  • 証明書類の整備
  • 継続的な監視体制の構築

業界別の対応

  • 各業界で異なる課題と対策
  • 早期対応による競争優位性の確保
  • 業界団体との連携の重要性

10-2 早期対応の重要性

 EUDRへの対応は、単なるコンプライアンス対応を超えて、企業の持続可能性と競争力に直結する重要な取り組みです。移行期間を無駄にすることなく、以下の観点から早期の準備計画策定を強く推奨します:

リスク回避

  • 制裁措置の回避
  • 市場アクセスの確保
  • 取引先との関係維持

機会創出

  • 新たな市場セグメントへの参入
  • 持続可能な商品の開発
  • ESG投資の獲得

10-3 継続的な取り組みの必要性

 サプライチェーンの管理は一度整備した後も、以下の要因により継続的な運用・見直しが必要です:

外部環境の変化

  • 規制の改正・強化
  • 国際情勢の変化
  • 気候変動の影響

内部体制の強化

  • 人材の育成・確保
  • システムの更新・改善
  • ノウハウの蓄積・共有

 EUDRは、環境規制としての側面だけでなく、企業の持続可能な成長と競争力強化のための重要な機会として捉え、積極的な対応を進めることが重要です。

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