【2025年最新版】エルニーニョ/ラニーニャ現象とは?日本の気候変動を企業向けロードマップとともに徹底解説 - CO2可視化削減プラットフォーム「EcoNiPass」情報サイト
  1. HOME
  2. ブログ
  3. TCFD
  4. 【2025年最新版】エルニーニョ/ラニーニャ現象とは?日本の気候変動を企業向けロードマップとともに徹底解説

【2025年最新版】エルニーニョ/ラニーニャ現象とは?日本の気候変動を企業向けロードマップとともに徹底解説

■AIによる記事の要約

 2024年のエルニーニョから、2025年はラニーニャへ移行する可能性が高まっており、日本の気候は大きく変動すると予測されています。エルニーニョは暖冬・猛暑・豪雨を、ラニーニャは厳冬・大雪・冷夏を招き、農業・漁業、物流、エネルギー需給など多方面に影響します。企業は気象庁やNOAAの情報を継続的に確認し、地域別リスク評価、設備の強靭化、調達先の多元化、TCFD対応などを進める必要があります。気候変動対応は事業継続だけでなく競争優位につながる重要な経営課題です。

 2025年、日本は気候変動の大きな転換期を迎えようとしています。気象庁・JMA、アメリカのNOAA(米国海洋大気庁)の予報からは、2024年のエルニーニョ現象から、今後ラニーニャ現象へシフトする可能性が高まっていることが示唆されています。

 この気候の変化は、単なる気象情報ではなく、日本企業のサプライチェーン・事業継続性・収益性に直結する重要な経営課題です。本記事では、エルニーニョ・ラニーニャ現象の基礎知識から、日本国内への具体的な影響、そして企業がとるべき対応策までを、わかりやすく解説します。

 エルニーニョ・ラニーニャは、太平洋赤道域における海水温異常と大気・海洋相互作用で発生する気候現象です。ENSO(El Niño–Southern Oscillation)と呼ばれ、平均2~7年のサイクルで発生することが知られています。

エルニーニョ(暖期) では、通常は西側に偏っている暖水が東進し、赤道太平洋東部の海水温が平年より高くなります。これが大気循環に影響を与え、日本を含むアジア地域の気象パターンを変化させます。具体的には、貿易風が弱まることで暖水が東へ移動し、赤道太平洋中・東部の海面水温(SST)が通常よりも高くなる異常が発生します。

ラニーニャ(冷期) では逆に、貿易風が強まり、暖水がさらに西側に留まり、赤道太平洋東部の海水温が平年より低くなり、異なる気象影響をもたらします。

 気象庁の定義によれば、これらは「熱帯太平洋を舞台とした自然気候変動パターン」であり、企業の気候リスク管理において重要な指標です。過去のデータから、定義としては5ヵ月連続して熱帯太平洋Niño3領域(赤道・150°W~90°W)で海面水温偏差が +0.5℃以上(エルニーニョ)または -0.5℃以下(ラニーニャ)という基準が一般的です。

 エルニーニョ・ラニーニャを理解するために重要なのが、「海洋変動が大気に影響を与え、大気変動が海洋へフィードバックをかける」という大気海洋相互作用の仕組みです。

 赤道太平洋で暖水が東進すると、その上空の対流が活発化し、降水パターンが変化します。その結果、貿易風が弱まったり気圧分布の変化が生じ、それが再び海洋流・海水温に影響を与えるという循環構造があります。

 この連鎖があるため、エルニーニョ・ラニーニャの発生・発展には「海水温」「貿易風」「下層水温・湧昇(アップウェリング)」「対流・降水分布」「ジェット気流・北半球中緯度への影響」など、多くのプロセスが複雑に絡み合っています。

 企業視点で言えば、例えば海水温が変化して漁場が変わったり、降水パターンが変化して農地が浸水・干ばつに見舞われたり、といった「気象現象発生 → 社会・経済・産業への影響」という因果チェーンを想定することが必要です。

 2024年は、世界的に注目されたエルニーニョ期でした。2024年中を通じて熱帯太平洋中部~東部で海水温上昇が観測され、エルニーニョ相当の状態が継続していました。JMAの「ENSO観測・予測アウトルック」でも、2024年中にエルニーニョ傾向が強まったことが明示されており、特に秋~冬にかけて日本・東アジアの気候への影響可能性が指摘されました。

 しかし、2025年10月時点でのJMAの発表によると、「熱帯赤道太平洋の海水温(Niño3領域)が-0.5℃程度の低めの偏差で、ラニーニャ傾向に近いが、ENSO-ニュートラル状態が続く可能性80%」との見通しが示される一方で、NOAAのCPC(Climate Prediction Center)は「10~12月にかけてラニーニャに移行する確率71%」と報告しています。

 さらに、12月以降の2025年末~2026年初頭にかけてもラニーニャ傾向が継続する確率が54%であるとも報告されています。つまり、2025年後半から2026年初頭にかけて、ラニーニャ傾向が強まる可能性が高い状況です。企業としては、この気候転換に伴う気象パターンの変化を事前に想定しておく必要があります。

 ただし「確率が高い=必ず起きる」わけではなく、予測モデルには限界があることが重要です。特に春季には「予測バリア」と呼ばれる時期があり、この時期は予測精度が低くなる傾向があります。このため、複数のシナリオを想定した対応が必須です。

 エルニーニョ期とラニーニャ期では、日本の各地域で異なる気象影響が出現します。

エルニーニョ期の日本への影響

冬季 :暖冬傾向になりやすく、南岸低気圧の発生頻度が増えて降雪量が少なめとなる場合があります。北海道など積雪地域でも雪が少ないため、スキー場運営や冬季物流に影響が出やすくなります。

夏季 :猛暑・豪雨の可能性が高まることがあります。東アジアモンスーンや梅雨移行期の変化が報告されており、集中豪雨による農業被害や工場の浸水リスクが高まります。

台風・熱帯低気圧 :進路が例年と異なることがあり、台風が日本列島の南側を通過するケースが比較的多くなるという指摘もあります。

 企業的視点では、暖冬による暖房需要減・冷房需要先行、豪雨によるインフラ・物流リスク増大、猛暑による電力負荷・熱中症リスク増などが想定されます。

ラニーニャ期の日本への影響

冬季 :厳冬・大雪傾向となる可能性が高まります。強い冬型気圧配置・シベリア気団の流入増により、低温・豪雪リスクが顕著になります。特に日本海側は大雪になりやすく、交通遮断や除雪コストの増加につながります。

夏季 :冷夏・降水量が少なく・日照不足となるケースがあり、特に農作物の作況に影響を及ぼすことがあります。水稲の生育遅延や野菜類の品質低下につながりやすい傾向があります。

台風・豪雨 :台風の接近回数や進路が例年と異なることがあり、豪雨傾向・洪水リスクが高まる地域も報告されています。

企業視点では、冬季の寒冷負荷増・暖房設備稼働強化、水道・電力の冬期需要変動、農作物収穫量減少へのサプライチェーン影響などが懸念点です。

地域別の詳細な影響

北海道 :冬季の降雪量・気温変動が大きく、エルニーニョ期には雪が少なめ、ラニーニャ期には大雪・低温傾向という統計があります。2019年/20年冬季では北海道・東北の雪量が記録的に少なかったという報告があり、このような変動が経済に大きな影響を与えます。

東北地方 :寒冷渦・冷害・豪雨リスクが比較的大きい地域です。特に梅雨・台風期の東北豪雨リスクや、冷夏による農作物被害が注目されます。稲作が主要産業であるため、ラニーニャ期の冷害による米不足・価格上昇の影響が全国に波及しやすい地域です。

関東地方 :都市部・沿岸部を含むため、降水量変化・給水・電力負荷・都市熱島効果との複合リスクが高まります。エルニーニョ期の猛暑・豪雨、ラニーニャ期の寒冷・冷夏も意識する必要があり、企業の事業継続リスク管理が重要になります。

関西地方 :暑さ・豪雨リスク・水資源枯渇リスクなどが懸念されます。夏季冷房需要のピーク化、気温上昇による物流・インフラ影響などが想定されます。また、一級河川の洪水リスク増加に備えた設備対応が必要です。

九州地方 :台風の接近頻度・豪雨被害の経験が多く、エルニーニョ・ラニーニャ時の台風ルート変化・豪雨リスク増を注視すべき地域です。農業・畜産業への被害も大きく、事業継続計画の策定が急務です。

沖縄地域 :亜熱帯海域であるため、海水温の急速な上昇・黒潮の変動・沿岸漁業・マングローブ・サンゴ被害など、海洋環境変化の影響を直接受けやすい地域です。特にラニーニャ期の冷水・暖水移動による漁場変動リスクを抱えています。

 日本の食糧生産は気候変動に極めて脆弱です。

農業への影響

 エルニーニョ期の豪雨は、稲作の倒伏・病害虫発生・土壌流失を招きやすく、収量減・品質低下につながります。一方、ラニーニャ期の冷夏は「冷害」と呼ばれ、稲の生育遅延・不作を引き起こし、米価の上昇につながる歴史的な事例も多くあります。

 気温が上昇しているトレンド環境下では、病虫害の拡大・発生時期の前倒しという傾向もあります。つまり、「異常気象+高温基盤」という組み合わせが、農業にとっては「複合リスク」となり得ます。

 企業としては、農産物を原料とする製品(食品、飲料、加工品など)を展開している場合、「冷夏シナリオ」を想定した原料価格上昇・供給リスク・代替原料検討などが必要です。また、耐性品種の導入・スマート農業センサーによるモニタリング・気象予報との連携によるリスク低減策を検討する価値があります。

漁業への影響

 海洋を事業フィールドとする漁業・養殖業においても、エルニーニョ・ラニーニャの海水温変化は収益・資源分布・操業コストに直結します。

 黒潮の蛇行・変動は、暖水域の位置や海洋生産基盤(プランクトン→小魚→大型魚)に影響を及ぼします。エルニーニョ期の暖水東進等が、マグロなど大型魚の回遊ルート変化を招くケースがあります。こうした変化は漁獲量低下・燃料コスト上昇・操業時間長期化につながる可能性があります。

 沿岸漁業においては、水温変化が直ちに魚種分布・漁獲効率に影響します。例えば、暖水化により北上・南下する魚種が変わったり、稚魚育成環境が悪化したりすることがあります。養殖業でも、水温管理コストの増加・病害リスクの上昇・餌効率の低下などが懸念されます。

 食品企業・物流企業は、こうした農漁業の変動を「調達先の多元化」「代替原料の確保」「価格ヘッジ戦略」で対応することが求められます。特に国内供給に加え、東南アジア・オーストラリアなど海外供給地域でのENSO影響をモニタリングし、「原料価格上昇・供給遅延・輸送コスト増」というリスクシナリオを立てておくことが重要です。

1. 気象情報の継続モニタリング

 気象庁・JMA・NOAAの公開情報を定期的にチェックし、異常気象の前兆を早期に把握することが最初のステップです。特に、気象庁の「異常天候早期警戒情報」「防災気象情報」は企業のBCP(事業継続計画)に組み込むべき情報です。

 具体的には、以下のような体制が推奨されます。気象庁・JMAからの定期・臨時の警報情報をリアルタイムでモニタリングする。気象情報を自社BCP・事業継続マニュアルに反映し、異常気象発生時の対応手順を整備する。物流・設備・インフラに関するモニタリングと連携し、異常気象予測時に前倒しで対策を講じる(例:豪雨予測時の排水確認、猛暑予測時の冷房・電力準備)。

2. 地域別リスクマッピング

 事業所・サプライチェーン拠点を地図上にマッピングし、それぞれの地域で予想される気象リスク(豪雨・台風・猛暑・大雪)を定量的に評価します。これにより「いつ」「どこで」「何が起きやすいか」が明確化されます。

 自社の立地拠点毎に気候変動影響を整理し、各自治体が策定する「地域気候変動適応計画」との照合を行うことも有効です。さらに、過去10~20年の自社被害実績を洗い出し、どの気象現象がどのような経営影響をもたらしたかを分析しておくことが望まれます。

3. インフラ・設備の強靭化

 豪雨対応の排水機能強化、猛暑時の冷房・電力確保、停電時の非常用電源整備、老朽設備の気候対応型メンテナンスなど、物理的なレジリエンス強化は必須です。

 具体的には、工場・物流拠点周辺の排水能力を点検・強化し、空調設備の更新・省エネ化・予備電源設備を確保します。台風・豪雨・雷害による停電リスクに備えて、予備電源・非常用設備・再生可能エネルギー+蓄電池導入を検討することが重要です。

4. 調達・サプライチェーンの多元化

 農産物・海産物・エネルギー・原材料など、気候依存的な調達先を複数確保し、気候リスクの集中化を避けることが重要です。

 調達先の多元化・リスク分散を図り、複数ルートを確保します。気候リスクを反映させた契約条項(供給保証・価格ヘッジ)を検討し、保険・再保険市場の活用も視野に入れます。

5. TCFD(気候関連財務情報開示)への対応

 投資家・顧客・取引先は企業の「気候変動リスク管理」を厳しく評価するようになっています。自社の気候リスク・機会を定量化し、経営戦略に組み込んだ情報開示が必須です。

 TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みに基づいて、ガバナンス体制・気候関連戦略・リスク&機会の定量化・指標・目標の設定を実施します。エルニーニョ・ラニーニャといった自然変動リスクも含めた気候シナリオ分析を行うことが望まれます。

 エルニーニョからラニーニャへの気候転換が予想される2025年、企業は次のアクションを検討すべきです。

第1段階(今すぐ) :複数の気候シナリオ(ラニーニャ発生、ニュートラル継続、弱エルニーニョ再発)を想定し、それぞれのサプライチェーン影響を分析。気象庁・JMA・NOAAの最新予報データを定期的にモニタリングし、社内カレンダー・BCPと連携させます。

第2段階(1~3ヶ月以内) :気象情報をBCP・事業継続マニュアルに反映させ、社内の意思決定プロセスを整備。自社の所在地・調達・物流拠点・原料供給地域を地域別にマッピングし、気候影響を「誰が/いつ/どこで/どのくらい」想定するかを明確にします。

第3段階(3~6ヶ月以内) :設備点検・強化、調達先見直し、保険・ヘッジ戦略の実装。異常気象対応・設備レジリエンス強化・気候関連情報開示(TCFD等)を少なくとも3年スパンでロードマップ化します。

第4段階(通年) :気候リスク対応を経営戦略に位置付け、TCFD等による外部への情報開示を実施。気候変動対応を「コスト」ではなく「ビジネス機会」として捉え、技術革新・新サービス・差別化戦略として検討を続けます。

 気候変動への対応は、もはや企業の選択肢ではなく必須課題です。自社の気候リスク対応が優れていることは、投資家の信頼獲得、顧客満足度向上、従業員のモチベーション向上にもつながります。

 国際的な枠組み(パリ協定、SDGs)への参画、TCFD提言に基づいた情報開示、自社の「気候対応先進企業」としての位置付けは、中長期的な企業価値向上へと導くものです。

 エルニーニョ・ラニーニャという自然変動は、企業の「いつもの気象」ではなく、営業利益・サプライチェーン・従業員の安全に直結する重大な経営課題です。

 2025年のラニーニャ移行は、多くの企業にとって「気候適応」を真剣に考える最後のチャンスかもしれません。気象庁・JMAのデータを参考にしながら、自社の気候リスク対応を今から始めることをお勧めします。

 気候変動への対応は、コスト・リスク管理のみならず、新規事業開発・ブランド価値向上・競争優位性確保へと転換できる経営戦略です。本記事で紹介した対応策を参考に、ぜひ社内での気候リスク管理体制を整備してください。

参考資料

関連記事

ガイド集

実データを用いたCFP算定完全ガイド 
By.EcoNiPass
資料ダウンロード

CO2排出量算出の法改正と影響ガイド 
By.EcoNiPass
資料ダウンロード

初心者でも失敗しない!CO2排出量管理システムの選び方 
資料ダウンロード

CFP算定までの基本ガイド
資料ダウンロード

2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
NEW POST