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日本の脱炭素関連制度で企業に求められるデータ項目を公式資料から整理する

■AIによる記事の要約

 本記事では、日本企業が対応を求められる脱炭素関連制度について、環境省や経済産業省の公式資料を基に、提出・管理が求められるデータ項目を整理しています。温対法や省エネ法では、排出量やエネルギー使用量といった活動量データに加え、排出係数や集計結果、提出履歴の管理が共通して求められます。制度対応を安定させるためには、単発の算定ではなく、毎年同じ前提で継続的に算定・報告できるデータ管理体制を整えることが重要であることを解説しています。

 脱炭素対応において、企業が実務の現場で直面する課題の一つが、
「どの制度で、どのデータを、どの粒度で管理・提出すればよいのか分かりにくい」
という点です。脱炭素という言葉自体は広く浸透している一方で、実際の制度対応では、排出量やエネルギー使用量などのデータを、一定のルールに基づいて算定・整理し、継続的に管理することが求められます。

 環境省や経済産業省が公表している各種制度資料を確認すると、制度ごとに目的や対象、報告様式は異なるものの、企業に求められているデータの種類や構造には共通点が多いことが分かります。こうした共通項を整理せずに個別対応を行うと、制度ごとに管理方法が分断され、実務負荷が高まりやすくなります。

 本記事では、日本企業が対応を求められる主要な脱炭素関連制度について、**公式資料に明示されている「提出・管理すべきデータ項目」**を整理し、制度対応の全体像を把握することを目的とします。

 本記事では、以下の制度・枠組みを対象とします。

  • 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(温対法)
  • 省エネ法(エネルギー使用量等の定期報告)
  • 国際的な算定・開示の標準(GHGプロトコル等)

※本記事では制度の優先順位や対応順序の判断は行わず、制度要件の事実整理に徹します。

 脱炭素関連制度への対応にあたっては、制度ごとの細かな違いに目が向きがちですが、実際に算定・報告の前提となるデータ項目には共通点があります。

組織・拠点情報(マスタデータ)

  • 事業者名、法人番号等
  • 対象事業所・工場・オフィスの一覧
  • 所在地、事業区分
  • 制度上の報告単位(事業者単位/事業所単位)

 まず必要となるのが、組織・拠点情報に関するマスタデータです。事業者名や法人番号といった基本情報に加え、対象となる事業所・工場・オフィスの一覧、所在地、事業区分などを整理し、制度上どの単位(事業者単位か事業所単位か)で報告するのかを明確にしておく必要があります。

活動量データ(算定の基礎)

  • 燃料使用量(種類別)
  • 購入電力使用量
  • 他者から供給された熱(蒸気・温水等)の使用量

 次に、算定の基礎となる活動量データが求められます。具体的には、燃料の使用量を種類別に把握すること、購入電力の使用量、他者から供給された熱(蒸気・温水など)の使用量といったデータです。これらは温室効果ガス排出量の算定だけでなく、省エネ法の報告においても共通して用いられます。

換算・算定用データ

  • 燃料別排出係数
  • 電力排出係数
  • 原油換算係数(省エネ法)
  • 係数の適用年度・版情報

 さらに、活動量データを排出量や評価指標に変換するための換算・算定用データも欠かせません。燃料別排出係数や電力排出係数、原油換算係数などを用いる際には、どの年度・どの版の係数を適用したかを併せて管理することが、制度対応の正確性を保つ上で重要です。これらのデータは、制度が異なっても算定・報告の前提として共通で求められるものです。

 これらは、制度が異なっても算定・報告の前提として共通で求められるデータです。

排出源・対象範囲を特定するデータ

  • 対象となる温室効果ガスの種類
  • 排出区分(エネルギー起源CO₂ 等)
  • 報告対象となる事業者・事業所の範囲

 温対法に基づく温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度では、企業はまず、どの排出源が制度の対象となるのかを明確にするためのデータを整理する必要があります。対象となる温室効果ガスの種類や、エネルギー起源CO₂などの排出区分を特定するとともに、報告対象となる事業者や事業所の範囲を制度の定義に従って確定します。この対象範囲の整理が不十分な場合、算定対象の漏れや重複が生じる可能性があります。

排出量算定に必要な一次データ

  • 燃料種類別使用量
  • 購入電力量
  • 熱使用量
  • 算定方法に応じた補足情報(供給元、契約区分 等)

 次に求められるのが、排出量算定に直接用いられる一次データです。燃料の種類別使用量、購入電力量、熱使用量といった活動量データは、環境省が定める算定方法に基づいて排出量へ換算されます。加えて、算定方法に応じて、エネルギーの供給元や契約区分などの補足情報を併せて整理しておくことが求められます。

報告・提出用の集計データ

  • 事業者単位の年間排出量
  • 事業所単位の排出量(制度・年度要件に応じて)
  • 報告年度・算定方法の明示

 これらの一次データを基に、報告・提出用の集計データを作成します。事業者単位の年間排出量や、制度や年度要件に応じた事業所単位の排出量を算出し、報告年度や適用した算定方法を明示することが必要です。

提出管理・履歴管理

  • 提出データの確定日
  • 使用した算定方法・係数の版
  • 修正・再提出の履歴

 さらに、提出後の修正や再提出に備え、提出データの確定日、使用した算定方法や係数の版、修正履歴を管理することも、制度対応を安定させる上で重要なポイントとなります。

エネルギー使用量データ

  • 燃料使用量
  • 購入電力使用量
  • 他人から供給された熱の使用量

 省エネ法に基づく定期報告では、事業者が使用したエネルギー量を把握し、その効率的な利用状況を確認するためのデータ提出が求められます。基礎となるのは、燃料使用量、購入電力使用量、他人から供給された熱の使用量といったエネルギー使用量データです。これらのデータは、事業者全体および事業所ごとに集計され、報告書作成の前提となります。

評価・指標データ

  • 原油換算エネルギー使用量
  • エネルギー消費原単位
  • 年度ごとの推移データ

 次に、エネルギー使用量を評価するための指標データが必要です。原油換算エネルギー使用量やエネルギー消費原単位を算出し、年度ごとの推移を整理することで、エネルギー使用状況の変化を把握します。これらは、改善状況を確認するための指標として制度上位置付けられています。

設備・管理状況データ

  • エネルギー使用設備の概要
  • 判断基準への対応状況
  • 中長期計画の進捗情報(該当する場合)

 さらに、設備・管理状況に関するデータも報告対象となります。エネルギーを使用する主要設備の概要や、判断基準への対応状況を整理し、該当する場合には中長期計画の進捗状況についても説明できる情報を備えておくことが求められます。

【共通】

  • 事業者・事業所マスタが最新化されている
  • 活動量データを年度単位で集計できる
  • 排出係数・換算係数の適用年度を管理している

【温対法】

  • 燃料・電力・熱の使用量が算定対象別に整理されている
  • 排出区分ごとに算定できる
  • 提出済データの履歴を保存している

【省エネ法】

  • エネルギー使用量を原油換算で集計できる
  • 原単位・前年差が算出できる
  • 設備・管理状況を説明できる情報が残っている

 脱炭素関連制度の公式資料を確認すると、制度が求めているのは単発の算定や一度きりの報告ではなく、毎年同じ前提と手順で算定・提出を継続できる状態であることが分かります。そのため、特定の担当者の記憶や作業手順に依存した対応では、年度替わりや担当変更の際に算定根拠が不明確になり、再現性が損なわれるおそれがあります。

 制度対応を安定させるためには、データを役割ごとに分けて管理することが重要です。具体的には、燃料や電力の使用量といった原データ(活動量)、排出係数や換算係数などの換算ルール(係数)、制度様式に基づいて作成した集計結果(提出データ)、そして提出日や修正内容を記録した提出・修正履歴を明確に区分して管理します。こうした整理を行うことで、算定結果の根拠を後から確認しやすくなり、制度対応の再現性と透明性を高めることができます。

 脱炭素関連制度で求められるデータ項目を整理すると、
**「データの種類が多く、かつ継続管理が前提」**であることが分かります。

 EcoNiPassは、こうした制度要件で求められる

  • 活動量データの一元管理
  • 排出係数を含めた算定管理
  • 制度・社内報告向けの集計・出力

といった業務を、継続的に行うための環境データ管理基盤として設計されています。

 制度対応を属人化させず、次年度以降も同じプロセスで対応したい場合の選択肢の一つとして、概要を確認しておくことができます。

▶ EcoNiPassの機能を見る(公式サイト https://econipass.com/

 脱炭素関連制度への対応では、新たな施策や取組内容に目が向きがちですが、実務上の成否を分けるのは、どのデータを、どの状態で継続的に管理できているかという点です。制度ごとに名称や様式は異なるものの、求められているデータ項目には共通性があり、あらかじめ整理しておくことで対応の見通しが立てやすくなります。

 公式資料に基づいて必要なデータ項目や管理の考え方を把握しておけば、制度改正や新たな情報提供要請が生じた場合でも、既存データを活用しながら対応することが可能になります。脱炭素対応を一過性の作業にせず、継続的な制度対応として進めるためにも、データ管理の土台を整えておくことが重要です。

参考リンク一覧(公式資料)

環境省|温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度(温対法)
資源エネルギー庁|省エネ法(エネルギー使用量等の定期報告)
国際標準・算定フレームワーク

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