建設業で活かせるカーボンニュートラル事例集

建設業界でも、カーボンニュートラルへの取り組みが急務となっています。環境問題への意識の高まりとともに、脱炭素化は避けて通れない課題であり、未来の持続可能な社会構築のために、建設業界の役割はますます重要になっています。

「カーボンニュートラルって具体的に何をすればいいの?」「自社で取り組むにはどんな方法があるの?」と、疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか?

この記事では、EcoNiPassチームが、建設現場で活かせるカーボンニュートラルの具体的な事例を豊富に紹介します。再生可能エネルギーの活用、省エネ建機の導入、ICT技術による効率化など、最新技術を駆使した様々な事例を通して、建設業におけるカーボンニュートラルへの取り組みを分かりやすく解説します。大手ゼネコンから中小建設企業まで、規模を問わず参考になる成功事例もご紹介しますので、ぜひ自社のカーボンニュートラル戦略策定にお役立てください。

カーボンニュートラルの実現に向けて、大手ゼネコン各社が積極的な取り組みを進めています。

大林組のカーボンニュートラルへの取り組み

大林組は、2050年までに自社のCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指し、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー技術の開発、ICTの活用を中心に取り組んでいます。

まず、再生可能エネルギーの導入では、太陽光発電や風力発電を自社施設や建設現場に取り入れ、施工時のエネルギー使用に伴うCO2排出を削減しています。また、再生可能エネルギー由来の電力を積極的に調達し、事業全体の脱炭素化を進めています。

次に、省エネルギー技術の開発では、建築物の設計段階から環境負荷を低減する高効率建築設計を採用し、断熱性能向上による冷暖房エネルギーの削減を実現しています。さらに、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及を推進し、省エネ技術と再生可能エネルギーを組み合わせた建築を提案することで、建物のライフサイクル全体のCO2排出量削減を目指しています。

また、建設現場でのICT活用では、BIM(Building Information Modeling)を活用し、設計から施工・管理までのデータ一元化により、資材ロスを削減しCO2排出を抑制しています。さらに、建設機械の電動化や遠隔監視システムの導入により、エネルギーの効率的な運用を実現しています。

これらの取り組みにより、大林組は建設業界全体の脱炭素化にも貢献し、持続可能な社会の実現を目指しています。

鹿島建設のカーボンニュートラルへの取り組み

鹿島建設は、カーボンニュートラルの実現に向け、低炭素型建設材料の開発と施工プロセスの見直しを推進しています。特に、CO2を削減する「カーボンリサイクル・コンクリート」の導入に注力しており、製造時に発生するCO2を吸収・固定化する技術を活用することで、大幅な排出削減を実現しています。このコンクリートは従来のものと同等の強度と耐久性を持ち、実際の建設現場でも採用が進んでいます。

施工プロセスの効率化にも取り組んでおり、ICTを活用した省エネ施工や、施工現場のエネルギー最適化を行うことで、無駄なエネルギー消費を削減しています。また、資材の輸送においても、輸送経路や方法の見直しを進め、CO2排出の抑制を図っています。

さらに、建設後の建物においても環境負荷を低減するため、高断熱材の使用や高効率設備の導入を推進し、冷暖房エネルギーの消費を削減しています。これにより、長期的な環境負荷の軽減が可能となります。

これらの取り組みを通じて、鹿島建設は建設業界の脱炭素化を牽引し、持続可能な社会の実現に貢献しています。

清水建設のZEB普及への取り組み

清水建設は、カーボンニュートラルの実現に向けて、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及を推進しています。ZEBとは、高性能な断熱材や最新の省エネ設備を導入し、エネルギー消費を最小限に抑えつつ、再生可能エネルギーを活用することで、年間の一次エネルギー消費量を正味ゼロにする建物です。

同社は、ZEBを実現するため、設計段階からエネルギー効率を最大限に考慮し、高効率な空調や照明設備を採用しています。また、太陽光発電システムや地中熱利用を積極的に導入し、建物内でのエネルギー消費を抑えながら、再生可能エネルギーの活用を拡大しています。これにより、建物のCO2排出量削減に大きく貢献しています。

実際のプロジェクトとして、自社の研究施設やオフィスビルをZEB仕様に改修し、エネルギー消費の削減効果を実証しています。さらに、自治体や民間企業と連携し、ZEBの普及促進活動を展開。設計・施工技術の支援や新たな基準策定にも積極的に関与し、業界全体の標準化を目指しています。

清水建設のZEB推進は、建築業界全体の脱炭素化を加速させ、持続可能な社会の実現に貢献する重要な取り組みとなっています。

竹中工務店のCO2排出削減への取り組み

竹中工務店は、建設現場でのCO2排出削減を目指し、プレハブ工法の採用、建設機械の電動化、再生可能エネルギーの活用を推進しています。これらの施策を通じて、環境負荷の低減とカーボンニュートラルの実現に貢献しています。

まず、建築部材を工場で製造し、現場での組み立てを最小限に抑えるプレハブ工法を積極的に採用しています。これにより、現場での作業時間や重機の稼働時間が短縮され、CO2排出量の削減につながります。さらに、施工の効率化が図られるため、環境負荷の低減と生産性向上の両方を実現できます。

また、従来のディーゼル燃料に依存しない施工方法として、電動クレーンやバッテリー式建設機械を導入しています。これにより、CO2排出量の削減だけでなく、騒音や振動の低減にもつながり、周辺環境への影響を抑えることが可能です。特に都市部の建設現場では、環境への配慮が求められるため、電動機械の導入は大きなメリットとなります。

さらに、再生可能エネルギーの活用として、建設現場に太陽光発電システムを導入し、現場の電力供給に利用しています。これにより、エネルギーの一部をクリーンな電力で賄い、CO2排出量の削減に貢献しています。

竹中工務店のこれらの取り組みは、環境負荷の低減にとどまらず、建設業界全体の脱炭素化を促進するモデルとなっています。技術革新を進めることで、持続可能な建設業界の実現を目指し、業界の変革を牽引しています。

これらの大手ゼネコンの取り組みは、建設業界全体の脱炭素化を推進するだけでなく、持続可能な社会の実現にも大きく貢献しています。各社の先進的な事例は、今後の建設業界におけるカーボンニュートラルへの道筋を示すものとして、注目されています。

ゼネコン(大手建設企業)だけでなく、中小建設企業においてもカーボンニュートラルへの積極的な取り組みが始まっています。

八洲建設株式会社の取り組み

八洲建設株式会社(大阪府)は、地域密着型の中小建設企業として環境対策を積極的に推進しています。環境マネジメントシステム「ISO14001」を取得し、脱炭素社会の実現に向けた様々な取り組みを進めています。

まず、業界団体や地方自治体、ゼネコンなどから環境対策に関する情報を収集・分析し、環境に配慮した施工方法や材料の選定、エネルギー効率の高い設備導入などの方針を策定しています。

また、自社のCO2排出量を正確に把握するため、営業車の燃料使用量や事務所の電力消費量を定期的に測定し、さらに建設現場では重機の稼働時間を基に排出量を算出しています。このデータを活用し、より効率的な削減方法を模索しています。

具体的な施策として、省エネルギー機器の導入や再生可能エネルギーの活用を進めています。例えば、営業車の電動化によりガソリン車からの排出ガスを削減し、現場作業では省エネ型重機を導入することで燃料消費を抑え、エネルギー効率を向上させています。

こうした取り組みを通じて、八洲建設は2025年までにCO2排出量を20%削減することを目標とし、持続可能な建設業の実現に貢献しています。

加山興業株式会社の取り組み

加山興業株式会社(兵庫県)は、廃棄物処理業を主業とし、環境負荷の低減に取り組む中小企業です。特にCO2排出量の削減を重視し、2030年までに50%削減、2050年のカーボンニュートラル達成を目標としています。

環境配慮を基本方針とし、温室効果ガス削減に向けた施策を実施しています。特に、廃棄物の焼却処理におけるCO2排出量削減に注力しており、新たに導入した高効率焼却炉により、従来よりもエネルギー利用効率を向上させ、排出量を削減しています。

さらに、自社だけでなくサプライチェーン全体での排出量削減にも取り組んでいます。具体的には、リサイクル率の向上や廃棄物の削減を推進し、処理過程で発生するCO2を減らしています。また、取引先とも連携し、排出量の測定と削減努力を共有することで、より広範な環境負荷の低減を目指しています。

これらの取り組みを通じて加山興業は持続可能な社会の実現に貢献し、業界全体の環境対策のモデルとなることを目指しています。

中小建設企業のカーボンニュートラルに向けた課題

中小建設企業がカーボンニュートラルを実現するには、いくつかの課題もあります。まず、限られた資源の中でどのように効率的にCO2排出量を削減するかが大きな課題です。また、カーボンニュートラルを達成するための投資が初期段階では高額になることもあり、特に資金的な面で困難を抱える企業も少なくありません。

さらに、業界全体での取り組みが進んでいない中で、自社だけでの取り組みがどれほど効果的であるかを見極めることも重要です。そのためには、業界全体での協力や情報交換が必要です。

中小建設企業は、限られたリソースを効率的に活用し、カーボンニュートラルを達成するための取り組みを進めています。八洲建設株式会社や加山興業株式会社などの事例からもわかるように、環境負荷の削減にはさまざまな方法があり、それぞれの企業が自社の強みを活かして取り組んでいます。これらの取り組みが広がれば、建設業界全体でのCO2排出量削減が進み、持続可能な社会の実現に大きな貢献をすることでしょう。

本記事では、建設業界におけるカーボンニュートラルの重要性、具体的な事例、そして未来の展望について解説しました。再生可能エネルギーの活用、省エネ建機の導入、ICT技術の活用など、様々な取り組みがCO2排出量削減に貢献していることがお分かりいただけたかと思います。

大手ゼネコンから中小企業まで、多くの企業が独自のカーボンニュートラル戦略を展開しており、環境配慮型建材の開発、サプライチェーン全体での排出量削減、地域資源の活用など、多様なアプローチが見られます。 これらの成功事例は、建設業界全体の脱炭素化に向けた取り組みを加速させる力となります。

しかし、カーボンニュートラルの実現には、CO2排出量の正確な把握が不可欠です。CO2排出量可視化ツールを活用し、現状を正確に把握することで、効果的な削減目標の設定と進捗管理が可能になります。可視化されたデータに基づいて改善策を実施することで、より効率的な脱炭素化を進めることができます。

建設業界は、社会インフラを担う重要な産業です。カーボンニュートラルへの取り組みは、企業イメージの向上、SDGsへの貢献、コスト削減、生産性向上、更には新たなビジネスチャンスの創出など、多くのメリットをもたらします。持続可能な社会の構築に向けて、建設業界が積極的にカーボンニュートラルに取り組むことは、未来への投資と言えるでしょう。

この記事で紹介した事例や情報を参考に、貴社もカーボンニュートラルへの取り組みを始めてみませんか? まずは、CO2排出量の可視化から始めましょう。CO2排出量可視化プラットフォーム「EcoNiPass(エコニパス)」は、貴社の脱炭素化を強力にサポートします。

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