【簡単解説シリーズ】 AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)とは?アジア脱炭素化を牽引する日本主導の枠組みをわかりやすく紹介

■AIによる記事の要約
AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)は、日本が主導し2022年に設立された、アジア地域の脱炭素化を目指す国際協力枠組みです。インドネシアやタイ、オーストラリアなど11カ国が参加し、各国の事情に応じた柔軟な脱炭素戦略を尊重しています。再生可能エネルギーや水素・アンモニア、CCUS、デジタル技術など多分野で協力が進められており、日本企業も技術移転や現地パートナーとの連携を通じて貢献しています。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、活動は本格化しています。
目次
1. はじめに – AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)とは
アジア・ゼロエミッション共同体(Asia Zero Emission Community、AZEC)は、日本が主導して2022年に設立した、アジア地域の脱炭素化を目指すための国際協力枠組みです。日本に加え、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンなどの東南アジア諸国とオーストラリアの計11カ国がパートナー国として参加しており、脱炭素化と経済成長・エネルギー安全保障の同時実現という現実的なアプローチを基本理念としています。
AZECのパートナー国は以下の11カ国で構成されています:オーストラリア連邦、ブルネイ・ダルサラーム国、カンボジア王国、インドネシア共和国、日本、ラオス人民民主共和国、マレーシア、フィリピン共和国、シンガポール共和国、タイ王国、ベトナム社会主義共和国
AZECの最大の特徴は、各国の多様なエネルギー事情や経済発展段階を考慮した現実的なアプローチにあります。従来の一律な環境規制とは異なり、各国の実情に応じた柔軟な脱炭素化の道筋を尊重し、技術革新と国際協力を通じて持続可能な発展を目指しています。
出典:
- 経済産業省:アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/azec.html - 外務省:アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合
https://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/ipr/pageit_000001_00123.html
2. AZEC設立の背景と歴史
アジア地域は世界で最も経済成長が著しい地域の一つでありながら、同時に温室効果ガス排出量の増加が課題となっています。急速な経済発展に伴うエネルギー需要の拡大により、環境負荷の低減と経済成長の両立が重要な課題となりました。
従来の脱炭素化への取り組みは、しばしば画一的な規制や目標設定を行うものでしたが、アジア各国は経済発展の段階や資源賦存、地理的条件などが大きく異なります。インドネシアのような資源豊富な国と、シンガポールのような都市国家では、エネルギー政策や脱炭素化の戦略が根本的に異なるのが現実です。
こうした状況を踏まえ、日本は2022年に「協調型アプローチ」を基本とするAZEC構想を提唱しました。このアプローチは、各国が自国の事情に応じた最適な脱炭素化の道筋を選択できる柔軟性を提供しながら、技術協力や資金支援を通じて地域全体の脱炭素化を推進することを狙いとしています。
脱炭素化、経済成長、エネルギー安全保障を同時に実現することは世界全体の課題となっています。特にアジア各国は、経済成長にともない今後もエネルギーの需要が増加する中で、この課題解決は困難ですという認識のもと、日本がリーダーシップを発揮してAZECの枠組みを構築しました。
出典:
- 資源エネルギー庁:アジアの脱炭素化をさらに促進!「AZEC首脳会合」で今後10年のためのアクションプランが採択
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/azec_2024.html - 資源エネルギー庁:アジアの脱炭素化を促進!「AZEC構想」(前編)日本はなぜ、アジアと協力するの?
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/azec_01.html
3. AZEC原則と基本方針
AZECは「AZEC原則」と呼ばれる基本方針に基づいて運営されています。この原則は、現実的で持続可能な脱炭素化を目指すために設計された包括的なアプローチです。
AZEC原則一覧表
Asia Zero Emission Community(アジア・ゼロエミッション共同体)の基本原則
原則名 | 詳細説明 |
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各国の事情に応じた多様な脱炭素化の道筋の尊重
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各国が自国の経済発展段階、資源賦存状況、地理的条件に応じて最適な脱炭素化の道筋を選択できることを重視します。例えば、天然ガス資源を豊富に持つ国では、天然ガスをブリッジ燃料として活用しながら段階的に再生可能エネルギーへの移行を進めることが可能です。
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技術中立性の原則
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特定の技術に偏ることなく、再生可能エネルギー、水素・アンモニア、バイオマス、炭素回収・利用・貯留(CCUS)技術など、幅広い選択肢の中から各国の状況に適した技術を選択することを支援します。この技術中立性により、各国は自国の産業構造や資源条件に最も適したソリューションを採用できます。
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現実的で段階的なエネルギートランジション
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急激な変化による経済的負担や社会的混乱を避けるため、段階的かつ現実的なエネルギー転換を重視しています。化石燃料からクリーンエネルギーへの移行において、エネルギー安全保障を確保しながら持続可能な移行を実現することを目指します。
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イノベーションを通じた課題解決の重視
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技術革新が脱炭素化の最も効果的な手段であるという認識のもと、研究開発の促進、技術移転、人材育成を通じて地域全体のイノベーション能力の向上を図ります。
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官民連携による取り組み推進
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政府レベルの政策協調だけでなく、民間企業の投資や技術開発を積極的に促進し、持続可能なビジネスモデルの構築を支援します。官民が一体となった取り組みにより、実効性の高い脱炭素化を推進します。
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出典:
- 政府広報オンライン:第2回AZEC閣僚会合の開催について
https://www.gov-online.go.jp/hlj/ja/september_2024/september_2024-08.html
4. 主要な活動と成果
4-1 首脳会合・閣僚会合の実績
AZECは設立以来、着実に活動を拡大してきました。主要な会合の開催実績は以下の通りです。
2023年3月には第1回AZEC閣僚会合が東京で開催され、AZECの協力枠組みが正式に立ち上げられました。2023年3月4日(土曜日)、経済産業省はアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合を開催しました
2023年12月には記念すべき第1回AZEC首脳会合が開催され、「アジア・ゼロエミッション共同体ビジョン」が採択され、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた具体的な目標が設定されました。
2024年8月には第2回AZEC閣僚会合が開催され、より具体的な協力プロジェクトの推進が図られました。
そして2024年10月、ラオス人民民主共和国のビエンチャンで第2回AZEC首脳会合が開催されました。日本からは石破内閣総理大臣、武藤経済産業大臣が出席しましたこの会合では、「今後10年のためのアクションプラン」が採択され、AZECの活動がさらに本格化することになりました。
AZEC発展の軌跡
アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)は設立以来、着実に活動を拡大し、アジア地域の脱炭素化に向けた重要な協力枠組みとして発展してきました。
2050年カーボンニュートラル実現に向けた具体的目標設定
AZEC活動の本格化・実行フェーズへの移行