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【簡単解説シリーズ】削減貢献量(AEP)完全ガイド:企業価値向上を実現する脱炭素指標の算定方法と活用事例

■AIによる記事の要約

 削減貢献量(AEP)は、企業が提供する低炭素製品・サービスにより社会全体でどれだけGHG排出を回避できたかを定量化する指標で、Scope1〜3の「守り」に対し「攻め」の価値創造指標として注目される。算定は「従来製品排出量−自社製品排出量×販売数量」で行い、国際標準化も進展中。日本の省エネ・高効率技術は国際競争力が高く、ESG評価や投資判断に直結。信頼性確保にはベースライン設定・データ収集・第三者検証・透明性開示が重要で、成長戦略と環境戦略の両立に寄与する。

目次

 2050年カーボンニュートラル実現およびパリ協定に基づく1.5℃目標の達成には、世界全体で急速かつ大規模なGHG削減が必要不可欠です。従来のScope1(自社直接排出)、Scope2(購入電力由来排出)、Scope3(バリューチェーン全体)だけでは、企業の排出量リスク評価にとどまり、環境技術や製品の社会的貢献度を適切に評価することができません。

 こうした課題を解決する新しい評価軸として、「削減貢献量(Avoided Emissions: AEP)」が企業価値向上の重要指標として注目を集めています。削減貢献量は、企業が提供する製品・サービスを通じて社会全体での排出削減にどの程度貢献しているかを定量的に示す革新的な指標です。

 特に日本の製造業が持つ省エネ技術や高効率製品の競争力を国際的に可視化する重要なツールとして期待されており、企業のESG評価や投資判断において決定的な役割を果たしています。

削減貢献量の正式定義と計算式

 削減貢献量とは、企業が提供する低炭素製品・サービスの使用により、従来製品と比較して社会全体のGHG排出量をどれだけ回避できたかを示すKPIです。基本的な算定式は以下の通りです:

(従来製品のGHG排出量 – 自社製品のGHG排出量) × 販売数量

この計算方法は、WBCSD(World Business Council for Sustainable Development)が発行する「Guidance on Avoided Emissions」に基づいており、国際的な標準として認知されています。

出展:WBCSD Guidance on Avoided Emissions(https://www.wbcsd.org/Programs/Climate-and-Energy/Climate/Resources/Guidance-on-Avoided-Emissions

従来のScope1,2,3排出量との本質的違い

Scope1-3 vs 削減貢献量 比較図表

Scope1-3 vs 削減貢献量

リスク評価(守り)と価値創造(攻め)の対比分析

評価項目
Scope1-3(守りの指標)
削減貢献量(攻めの指標)
目的
排出リスクの定量化
脱炭素社会への貢献度評価
評価観点
企業の環境負荷測定
社会全体への価値創造
戦略的位置づけ
リスク管理・コンプライアンス
成長戦略・競争優位性
低炭素製品販売増加時
❌ 排出量増加(負の評価)
✅ 社会貢献拡大(正の評価)
削減貢献量の価値創造フロー

従来製品

高炭素排出

CO₂: 100t

自社製品

低炭素技術

CO₂: 30t

社会への削減効果

削減貢献量

70t削減

算定式の視覚的説明

削減貢献量

削減貢献量 =
(従来製品のCO₂排出量 – 自社製品のCO₂排出量)
× 販売数量

社会全体の排出削減への貢献を定量化

Scope3排出量

Scope3排出量 =
自社製品のCO₂排出量
× 販売数量

自社製品による排出責任を定量化

具体例:低炭素製品の販売量増加時の評価

Scope3評価

販売量↑ → 排出量↑ → 負の評価

「環境負荷が増加している」

削減貢献量評価

販売量↑ → 削減効果↑ → 正の評価

「社会の脱炭素化に貢献している」

Scope1~3は企業の排出リスクを定量化する守りの指標である一方、削減貢献量は企業の脱炭素社会への貢献度、すなわち攻めの価値創造力を評価する指標として機能します。

 具体例として、低炭素製品の販売量が増加した場合

  • Scope3評価:排出量増加として負の評価
  • 削減貢献量評価:社会貢献拡大として正の評価

この根本的な視点の違いが、企業の成長戦略と環境戦略の両立を可能にする要因となっています。

グローバル気候変動対策の緊急性

 国連環境計画(UNEP)の最新報告によれば、1.5℃目標達成には2030年までに年間7.6%の排出削減が必要とされています。しかし、2020年のコロナ禍においても世界全体の削減率はわずか5.8%に留まり、イノベーションによる削減貢献がより一層重要性を増しています。

出展:UNEP Emissions Gap Report(https://www.unep.org/resources/emissions-gap-report-2023

日本主導の国際ルール形成

 経済産業省はCOP28およびCOP29において、WBCSDと共同で削減貢献量の国際的な枠組み構築を積極的に提案しました。GHGプロトコルへの組み込みも具体的に議論が進んでおり、日本がグローバルスタンダード形成をリードする戦略的な動きが加速しています。

最新の削減貢献量(AEP)導入動向データ

 GXリーグの最新報告によると、削減貢献量を開示する企業は2023年から顕著な増加傾向を示しており、2024年には金融機関を含む多様な業種での導入が本格化しています。2025年には更なる普及拡大が予測されています。

基本算定式と重要パラメータと重要ポイント

削減貢献量算定手順とグリーンウォッシュ回避策

削減貢献量算定手順

グリーンウォッシュ回避策を含む包括的フローチャート

削減貢献量 = (従来製品のGHG排出量 − 低炭素製品のGHG排出量) × 販売数量
信頼性の高い算定には適切な手順と検証が不可欠
1

ベースライン設定

従来技術の平均値や市場標準製品の性能基準を明確に定義

チェックポイント

  • 従来技術の平均値の妥当性確認
  • 市場標準製品の性能基準設定
  • ベースラインシナリオの根拠明確化
  • 業界標準との整合性確認

⚠️ グリーンウォッシュリスク

不適切なベースライン設定による削減効果の過大評価

対策:業界ガイドラインに基づく客観的基準の採用

2

データ収集

算定範囲を明確化し、信頼性の高いデータを体系的に収集

チェックポイント

  • 排出削減量の境界線設定
  • データ収集方法の標準化
  • データ品質の確保
  • トレーサビリティの確立

⚠️ グリーンウォッシュリスク

データの選択的使用や不完全な境界設定

対策:包括的なデータ収集と透明性の確保

3

算定実施

収集したデータを用いて基本式に基づく削減貢献量を算定

チェックポイント

  • 算定式の適切な適用
  • 各変数の妥当性確認
  • 計算過程の文書化
  • 感度分析の実施

⚠️ グリーンウォッシュリスク

算定方法の恣意的な選択や計算過程の不透明性

対策:標準化された算定手法の採用と計算根拠の明示

4

第三者検証

独立機関による客観的な検証プロセスで信頼性を確保

チェックポイント

  • 検証機関の独立性確認
  • 検証範囲の明確化
  • 検証プロセスの文書化
  • 検証結果の客観性確保

⚠️ グリーンウォッシュリスク

形式的な検証や利害関係のある機関による検証

対策:認定された独立検証機関の活用

5

透明性のある開示

根拠データと算定過程を透明性を持って開示し、信頼性を確保

チェックポイント

  • 根拠データの透明性確保
  • 算定方法の詳細開示
  • 前提条件の明確化
  • 継続的な情報更新

⚠️ グリーンウォッシュリスク

情報の選択的開示や誤解を招く表現

対策:包括的で理解しやすい情報開示

業界ガイドライン準拠

日本化学工業協会では、削減貢献量算定に関する詳細な業界ガイドラインを公表し、透明性の高い算定フレームワークを整備しています。 これらのガイドラインに準拠することで、信頼性の高い削減貢献量算定とグリーンウォッシュの回避が可能になります。

出展:日本化学工業協会 削減貢献量ガイドライン(https://www.nikkakyo.org/

グリーンウォッシュ回避のためのストーリー構築

 削減貢献量は単なる数値指標ではなく、「なぜその製品やサービスが社会的価値を創造するのか」という明確なナラティブが必要です。説明が不十分な場合、ステークホルダーからグリーンウォッシュと判断されるリスクが存在します。

 科学的根拠に基づく一貫したストーリーテリングが、投資家や金融機関からの信頼獲得において決定的な要素となります。

日本企業が世界をリードする技術分野

 日本企業は以下の分野で削減貢献量において圧倒的な競争優位性を発揮しています。

  • 高効率ヒートポンプ・空調システム:世界最高水準のエネルギー効率
  • 次世代自動車技術:ハイブリッド車・電気自動車の先進技術
  • 再生可能エネルギー機器:太陽光発電・水素製造技術

これらの製品群の世界展開により、日本の技術力が国際的な排出削減に大きく貢献し、企業価値向上に直結しています。

業界別削減貢献量活用事例

製造業:エネルギー効率の革新的向上を実現する工作機械・生産設備の導入により、製造プロセスでのGHG排出量を大幅削減

エネルギー産業:太陽光発電パネル・蓄電池システムの普及拡大により、化石燃料依存度の劇的な低減を実現

化学産業:省エネ型触媒技術・リサイクル原料活用により、間接的な排出削減効果を創出

自治体連携事例:滋賀県・川崎市では、域内企業との戦略的連携による削減貢献量の可視化に先駆的に取り組み、地域全体での脱炭素化を推進

海外市場での競争力強化戦略

 削減貢献量の戦略的活用により、日本企業は以下の競争優位を実現しています。

  • 欧州市場:厳格な環境規制下での製品採用率向上
  • ESG投資:非財務評価での決定的な優位性確保
  • グローバルサプライチェーン:脱炭素貢献による取引拡大

削減貢献量は、日本企業にとって環境価値と経済価値の同時実現を可能にする戦略的な成長ツールとして機能しています。

機関投資家による評価軸の変革

 機関投資家の間で、削減貢献量は企業の成長ポテンシャルを測定する革新的な非財務指標として急速に注目を集めています。従来のGHG排出量やエネルギー使用量がリスク情報に留まっていたのに対し、削減貢献量はポジティブインパクトを定量化できるため、将来的な売上・利益成長性との相関関係を明確に示すことが可能です。

 国際的なESG投資家の中には、削減貢献量の規模をイノベーション創出力の代理指標として評価する動きも顕著に見られます。特に脱炭素ソリューションを提供する企業群は、新市場創出能力や規制強化への適応力が高く評価され、投資先としての魅力が大幅に向上しています。

出展:PRI(国連責任投資原則)Annual Report(https://www.unpri.org/

金融機関の実践的活用事例

 国内外の主要金融機関では、削減貢献量を投融資判断の重要な評価基準として組み込む動きが本格化しています。GXリーグ参加金融機関では、融資・投資の選定プロセスにおいて企業の削減貢献量開示情報を戦略的な判断材料として活用しています。

 さらに、金融機関自身のScope3(投融資先排出量)開示義務化に伴い、取引先企業の削減貢献量把握が必須要件となり、企業側の情報開示圧力が急速に高まっています。

企業価値向上への具体的貢献メカニズム

 削減貢献量は、環境貢献という非財務要素を定量的に表現できる希少性の高い指標であり、売上高・株価といった財務指標との正の相関関係が複数の研究で実証されています。特に環境関連市場や政府調達における評価基準として採用が進展すれば、新規受注・資金調達面での決定的な競争優位が獲得可能です。

 経営層・IR部門にとって、削減貢献量は企業の長期ビジョンや技術戦略を投資家に対して説得力を持って説明する強力なエビデンスとして機能します。信頼性の高い非財務指標としての地位確立により、企業価値全体の持続的向上に大きく寄与します。

内部活用と外部活用の戦略的使い分け

 削減貢献量情報は、企業内部での戦略策定・投資判断といった意思決定プロセスの高度化と、対外的なブランディング・ステークホルダーエンゲージメント強化の両面で活用可能です:

内部活用戦略

  • 経営層:中長期成長シナリオの定量的裏付け
  • 技術部門:R&D投資優先順位の合理的決定
  • 人事部門:社会貢献実感による従業員エンゲージメント向上

外部活用戦略

  • 投資家:競合企業との明確な差別化要因
  • 顧客:製品・サービスの付加価値訴求
  • パートナー:サプライチェーン全体での価値共創

段階的導入のためのロードマップ

削減貢献量導入ロードマップ

削減貢献量導入ロードマップ

戦略的ステップによる段階的導入プロセス

1

Phase 1:基盤構築期

🎯 経営課題との明確な関連付けと活用目的の定義
📊 算定対象範囲の優先順位設定(製品群・地域・用途別)
🏆 成果指標・マイルストーン
目的定義書完成
対象範囲マップ策定
経営層承認取得
2

Phase 2:体制整備期

👥 社内専門チームの組成と外部パートナー連携構築
🤝 LCA・カーボンフットプリント専門機関との協力体制確立
🏆 成果指標・マイルストーン
専門チーム発足
外部機関契約締結
算定手法確立
3

Phase 3:実践展開期

📈 環境報告書・統合報告書での定量的開示開始
💬 ステークホルダーとの建設的対話プログラム実施
🏆 成果指標・マイルストーン
初回報告書発行
対話プログラム開始
フィードバック収集

重要成功要因

🎯 戦略的一貫性:企業理念・長期目標との完全な整合性確保
🔍 信頼性確保:第三者検証機関による客観的評価の導入
🔄 継続的改善:年次レビュー・対象拡大による算定精度の向上
🎯 戦略的価値
事業方向性の明確化
社会的存在意義の確立
競争優位性の獲得

欧州:再生可能エネルギー・モビリティ分野での実践

 欧州では、再生可能エネルギー導入量拡大と電動車普及促進を通じたGHG削減効果を、削減貢献量として体系的に評価する取り組みが先行しています。

ドイツ E.ON社:自社提供の再生可能エネルギー電力により顧客サイドで実現されるCO2排出回避量を年次サステナビリティレポートで詳細開示

フランス ルノー社:電気自動車のライフサイクルアセスメント(LCA)に基づく削減貢献量算定により、製品の環境価値を定量的にアピール

出展:E.ON Sustainability Report(https://www.eon.com/

米国:IT・クラウドサービス分野での革新

 米国では、IT・クラウド業界が先駆的にサービス提供によるGHG排出回避効果の測定・開示に取り組んでいます。

Google社事例:自社クラウドサービスが従来のオンプレミス環境と比較して実現するCO2排出削減量を「Avoided Emissions」として公式公表。クライアント企業のESG評価向上にも間接的に貢献

出展:Google Environmental Report(https://sustainability.google/

国際機関による標準化推進動向

 世界経済フォーラム(WEF)・WBCSDなどの主要国際機関では、Avoided Emissionsに関する共通ガイドライン・フレームワーク策定を積極的に推進しています。この標準化の進展により、今後は国際比較可能な形での開示が必須要件となる可能性が高まっています。

出展:WBCSD Guidance on Avoided Emissions(https://www.wbcsd.org/

 削減貢献量(AEP)は、脱炭素化と経済成長の同時実現を可能にする企業経営の革新的な基盤として、世界的に注目を集めています。従来のScope1~3に代表されるリスクベース評価指標に対し、削減貢献量は社会全体へのポジティブインパクトを可視化する画期的な指標として機能します。

 特に日本企業にとって、省エネ技術・高効率製造といった固有の競争優位を活かして国際市場での地位向上を実現する絶好の機会となります。国際ルール化に向けた動きも急速に進展しており、今後は企業価値向上戦略において削減貢献量の戦略的活用が必須要素となることは確実です。

 脱炭素時代においては、単なる排出抑制にとどまらず、社会に対する積極的な価値創出のあり方が問われます。削減貢献量という客観的・定量的なエビデンスを通じて、持続可能な未来に向けた企業の信頼性と成長性を同時に実証していくことが、これからの企業経営における成功の鍵となります。

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