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SAF(持続可能な航空燃料)は、航空業界の脱炭素化に向けた革新的な解決策として注目を集めています。バイオマスや廃棄物から製造されるこの次世代燃料は、従来のジェット燃料と比べてCO2排出量を大幅に削減できる点が最大の特徴です。
本記事では、SAFの概要やメリット、そして日本企業の最新の取り組みについて詳しく解説します。
SAF燃料(航空燃料)とは?
SAF(Sustainable Aviation Fuel)は、持続可能な航空燃料の略称で、従来の石油由来のジェット燃料に代わる次世代の航空燃料として注目を集めています。この革新的な燃料は、バイオマス、廃食油、都市ごみ、廃プラスチックなどの持続可能な原料から製造され、環境への影響を大幅に軽減することが可能です。
SAFの最大の特徴は、従来のジェット燃料と比較して約60~80%ものCO2排出量を削減できる点です。さらに、SAFの原料には植物由来のものが多く使用されており、植物の成長過程で大気中のCO2を吸収するため、燃焼時に排出されるCO2と相殺され、実質的な排出量をゼロに近づけることができます。
この次世代燃料の大きな利点の一つは、既存のインフラとの互換性です。SAFは現在の航空機や燃料システム、貯蔵施設をそのまま使用できるため、新たなインフラ整備が不要となります。これにより、航空会社は大規模な設備投資を行うことなく、環境に配慮した運航を実現できます。
また、SAFは日本のようなエネルギー資源の乏しい国にとっても重要な意味を持ちます。国内で調達可能な原料を使用してSAFを製造できるため、エネルギー安全保障の観点からも注目されています。SAFの製造方法は多岐にわたり、HEFA(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)やATJ(Alcohol to Jet)など、原料や技術に応じて異なる製造プロセスが採用されています。これらの技術革新により、より効率的で持続可能な燃料生産が可能となっています。
現在、世界的にSAFの生産量は従来のジェット燃料に比べてまだ少ない状況ですが、航空業界のカーボンニュートラル達成に向けて、今後さらなる普及と技術開発が期待されています。SAFは、環境に配慮しつつ航空産業の持続可能な成長を支える重要な要素として、今後ますます重要性を増していくでしょう。
SAF燃料(航空燃料)のメリット
SAF(持続可能な航空燃料)は、航空業界の脱炭素化に向けた重要な解決策として注目を集めています。この革新的な燃料には、従来のジェット燃料と比較して多くのメリットがあります。以下に、SAFの主な利点について詳しく解説します。
CO2排出量の大幅な削減
SAFの最大の利点は、従来のジェット燃料と比較してCO2排出量を大幅に削減できることです。ライフサイクル全体で見ると、SAFは約60〜80%のCO2排出量削減が可能です。これは、航空業界のカーボンニュートラル達成に向けた重要な一歩となります。
既存インフラとの互換性
SAFは従来の航空機、燃料システム、貯蔵施設をそのまま使用できるため、新たなインフラ整備が不要です。この特性により、航空会社は大規模な設備投資を行うことなく、環境に配慮した運航を実現できます。
国内生産の可能性
SAFは廃食油、バイオマス、都市ごみなど、国内で調達可能な原料から製造できます。これにより、エネルギー資源の乏しい日本にとって、燃料の安定供給やエネルギー安全保障の観点から大きなメリットとなります。
長距離航路への適用
電気航空機や水素航空機が短距離航路や小型機に限定されるのに対し、SAFは中長距離の航路や大型旅客機にも使用可能です。これにより、幅広い航空サービスで環境負荷を軽減することができます。
廃棄物の有効活用
SAFの原料として廃食油や廃プラスチックなどの廃棄物を利用できるため、廃棄物処理問題の解決にも貢献します。これは循環型社会の実現に向けた重要な取り組みとなります。
外部要因に左右されにくい安定供給
国内で生産可能なSAFは、世界情勢や外部の社会情勢に左右されにくい特性があります。これにより、航空燃料の安定的な供給が可能となり、航空業界の持続可能な発展を支えます。SAFは、これらの多様なメリットを通じて、航空業界の環境負荷軽減と持続可能な成長を同時に実現する可能性を秘めています。今後、技術開発や生産拡大が進むにつれ、SAFの重要性はさらに高まっていくことが予測されています。
国内企業のSAF燃料(航空燃料)への取り組み
日本国内の企業は、SAF(持続可能な航空燃料)の開発と導入に積極的に取り組んでいます。航空業界の脱炭素化に向けて、様々な企業が革新的なアプローチを展開しています。
以下で主要な企業の取り組みを紹介します。
航空会社の取り組み
日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)は、2030年までに全燃料搭載量の10%をSAFに置き換える目標を掲げています。両社は既に国際線定期便へのSAF搭載を開始し、SAF製造事業への出資も行っています。
JALは「JAL Corporate SAF Program」を展開し、SAFによるCO2排出量削減の環境価値を証書化して参画企業に提供しています。このプログラムにより、企業は航空利用によるCO2排出量を削減し、その実績を可視化することができます。
バイオ燃料メーカーの取り組み
ユーグレナは、微細藻類ユーグレナを原料としたバイオ燃料「サステオ」の開発に成功しました。2020年1月には国際規格「ASTM D7566 Annex7」の認証を取得し、2021年6月には「サステオ」が正式に登録されました。
ユーグレナの今後の計画も非常に意欲的で、2025年に商業プラントを建設し、2026年には年間25万キロリットルの本格生産を開始する予定です。現在のサステオの価格は約1万円/リットルですが、海外メーカーの価格帯(200〜1600円/リットル)に近づけるべく、低コスト化を進めています。
石油会社の取り組み
コスモ石油、日揮ホールディングス、レボインターナショナルの3社は、2022年11月に「合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY」を設立しました。この新会社は、国内初となる国産SAFの大規模生産を目指しており、100%廃食用油を原料とした年間約3万キロリットルのSAFの国内供給を計画しています。
SAF生産設備は大阪府堺市のコスモ石油堺製油所内に建設され、2024年度下期から2025年度初めの運転開始を予定しています。この設備では、SAFだけでなく、バイオプラスチックの原料となるバイオナフサやバイオディーゼルも生産される予定です。
商社の取り組み
三井物産は、米国のLanzaJet社と協働し、SAFの大規模生産に取り組んでいます。LanzaJet社が開発したAlcohol to Jet製法を用いて、高効率なSAFの製造を実現しています。
現在、年間3.8万キロリットルのデモプラントを建設中で、2030年までに年間約385万キロリットルのSAF製造にコミットしています。さらに、三井物産はコスモ石油と共同で、年間22万キロリットルのSAF国内生産も計画しています。
政府の支援
各企業の取り組みを後押しするため、日本政府も積極的に支援を行っています。国土交通省や経済産業省が協力し、国際競争力のある国産SAFの安定供給に向けた作業部会を設置しています。SAFの国際認証取得など、関連企業の支援に取り組んでいます。
日本国内の企業は、SAFの開発と導入に向けて多様な取り組みを展開しています。これらの努力により、2025年には国内でのSAF生産が本格的に開始され、2030年までに国内航空会社の燃料使用量の10%をSAFに置き換えるという目標の達成が期待されています。
まとめ
SAFは、航空業界における脱炭素化への重要な解決策として、大きな可能性を秘めています。
SAFは単なる代替燃料ではなく、航空産業の持続可能な未来を切り開く重要な技術です。今後、さらなる技術革新と社会実装により、地球環境に優しい航空輸送の実現が期待されています。