Scope 3 カテゴリー8についての解説

■AIによる記事の要約

 Scope 3 カテゴリー8は、企業がリースしている資産の使用に伴う間接的な温室効果ガス(GHG)排出量を指します。対象はオペレーティングリース資産で、建物、車両、機械設備などが含まれます。適切な管理には、リース契約情報やエネルギー消費データの収集、排出係数の適用が必要です。課題としてデータ収集の困難さや排出係数のばらつきが挙げられ、解決策として標準化やリース会社との連携が求められます。企業の持続可能性向上に不可欠です。

 企業の持続可能性への取り組みが求められる中、温室効果ガス(GHG)排出量の算定と管理は、企業経営において欠かせない課題となっています。特に、Scope 3 に分類される間接排出の把握は、サプライチェーン全体の環境負荷を評価する上で重要です。その中でも、「カテゴリー8(リース資産・上流)」は、企業がリースされている資産の排出量を対象とし、適切なデータ収集と算定が求められます。

 本記事では、Scope 3 カテゴリー8 に焦点を当て、その概要や必要なデータ、排出量の算定方法、直面する課題、そして効果的な管理手法について、EcoNiPassチームが詳しく解説します。企業がリース資産の排出量を適切に管理することは、環境負荷の削減だけでなく、投資家やステークホルダーからの評価向上にもつながります。

 Scope 3 は、企業の温室効果ガス(GHG)排出量を測定する際の枠組みであり、サプライチェーン全体の排出を対象としています。その中でも「カテゴリー8」は、”リース資産(上流)“を指し、企業がリース契約によって借り受けた資産の使用に伴い発生する間接排出を対象とします。

 企業が使用するリース資産には、主にオペレーティングリースファイナンスリースの2種類があります。

  • オペレーティングリース:企業が一定期間にわたりリース会社などの貸主から資産を借り受け、使用料を支払う契約形態。資産の所有権は貸主にあり、貸借対照表に計上されません。
  • ファイナンスリース:リース期間終了後に資産の所有権が移転する、または経済的に所有権を持つとみなされる契約形態。貸借対照表に計上され、Scope 1またはScope 2の排出に含まれます。

 カテゴリー8では、企業の財務会計上貸借対照表に計上されないオペレーティングリース資産が対象となります。これは、企業が所有する資産ではないため、Scope 1(企業の直接排出)やScope 2(購入したエネルギーに伴う排出)には含まれません。しかし、実際には企業の事業活動の一部として使用されるため、Scope 3 のカテゴリー8として考慮されます。

 カテゴリー8に該当するリース資産には、具体的に以下のようなものが含まれます。

  • 建物やオフィススペース:企業が賃借しているオフィスビル、工場、倉庫など。
  • 車両や輸送機器:リース契約で使用している社用車、トラック、フォークリフト、航空機など。
  • 機械設備やIT機器:製造業で使用する機械、コピー機、データセンターのサーバーなど。

 これらの資産の使用に伴い、電力消費や燃料燃焼が発生することでGHG排出が生じます。そのため、企業はリース契約に基づく資産の使用状況を把握し、それに関連するエネルギー消費量や排出量を算定する必要があります。

 カテゴリー8の排出量を適切に計測し、報告するためには、以下の情報が必要です。

リース契約の詳細情報

 リース資産の排出量を正確に把握するには、まず契約内容を明確にすることが重要です。以下の項目を整理することで、データの精度を向上させることができます。

  • 契約期間:リース契約が何年または何カ月継続するのかを確認。
  • リース資産の種類:車両、設備、建物など、対象となる資産の詳細。
  • リース会社の情報:貸主がどのような排出量データを提供できるのかを把握。
  • エネルギーデータ提供の義務付け:契約時にエネルギー消費データの提供を義務化することで、より正確な排出量の算定が可能になる。

使用データの収集

 リース資産がどの程度利用されているかを把握するため、エネルギー消費に関するデータを収集する必要があります。

  • エネルギー消費量:電力、燃料の使用量を記録。
  • 稼働時間や利用頻度:どの程度の頻度で使用されるのかを記録し、排出量の推定に活用。
  • IoT・テレマティクスの活用:車両や設備にIoTセンサーを設置し、リアルタイムでエネルギー消費データを取得することで、より正確な排出量管理が可能になる。

リース資産別のエネルギー消費データ例

リース資産エネルギー消費データ例
車両燃料消費量(L/km)、走行距離(km/月)
建物電力使用量(kWh/月)、冷暖房設備のエネルギー消費量
機械設備稼働時間(時間/日)、電力消費量(kWh/時間)

 IoT技術を活用すれば、車両の燃費データや設備のエネルギー使用状況を自動収集できるため、人的負担を減らしながら正確なデータを確保できます。

排出係数の適用

 収集したデータを基に、排出量を計算するために排出係数を適用します。

  • エネルギー消費に対応する排出係数:電力、燃料ごとのCO2排出量を考慮。
  • 国や地域の基準を適用:電力の排出係数は国や地域によって異なるため、適切な数値を使用。

 例えば、日本の電力排出係数は約0.5 kgCO₂/kWhですが、欧州では再生可能エネルギーの割合が高いため、より低い係数が適用されることがあります。

データ管理と報告

 収集したデータを適切に管理し、外部へ報告するプロセスも重要です。

GHGプロトコルに基づいた計算方法を適用

  • GHGプロトコルの「カテゴリー8」に準拠した排出量算定を行う。

報告書の作成および開示

  • CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)SBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアティブ) などの枠組みに適合したレポートを作成。
  • エネルギー消費データのトレーサビリティ確保:データの信頼性を向上させるため、各リース資産ごとにデータを追跡できる仕組みを導入する。

 企業がScope3カテゴリー8(リース資産)における温室効果ガス(GHG)排出量を正確に測定し、適切に報告するためには、いくつかの課題を克服する必要があります。

データ収集の困難さ

 まず、データ収集の面では、リース資産のエネルギー消費データが提供されないことが多く、リース会社がエネルギー消費データを管理していない、または提供を拒む場合、正確な測定が難しくなります。

 また、収集したデータの形式が統一されておらず、異なるリース会社や国・地域ごとに異なるデータフォーマットが用いられるため、データの集約や比較が煩雑になることもあります。

排出係数のばらつき

 排出係数のばらつきも大きな課題であり、各国・地域で異なる排出係数が採用されるため、計算結果の比較が困難になります。特に、電力の排出係数は国ごとの電力構成に依存するため、統一的な基準が求められます。同じ設備でも使用環境やメンテナンス状況によりエネルギー消費が異なるため、標準的な排出係数を適用しても誤差が生じる可能性があるのです。

リース会社との連携不足

 リース会社との連携不足も課題の一つであり、企業側がリース会社と十分な情報交換を行えていないことがあります。特に、リース契約時に環境データの提供が義務付けられていない場合、必要なデータを取得することが難しくなります。さらに、リース会社の協力が得られない場合、推定データに頼らざるを得なくなり、結果としてデータの信頼性が低下することにつながります。

算定手法の標準化の遅れ

 算定手法の標準化の遅れも大きな問題となっています。企業ごとに異なる算定方法が用いられることがあり、業界全体での透明性が確保されにくく、規制やガイドラインの整備が遅れているため、企業が独自の方法で算定を行うことになり、結果の一貫性が失われる可能性があります。

 これらの課題を解決するためには、データ管理システムの導入、標準化された排出係数の活用、リース会社との協力体制の強化、外部機関の認証取得といった手段が有効です。

データ管理システムの導入

  • エネルギー管理システム(EMS)の活用
    • リース資産ごとのエネルギー使用量を記録・分析。
    • 電力消費、燃料使用量、稼働時間などをリアルタイムで管理。
  • リース会社との契約条件を明確化
    • エネルギー使用データの提供を契約時に義務付ける。
    • データのフォーマットを標準化し、企業側での処理を容易にする。

標準化された排出係数の活用

  • 国際的な基準(GHGプロトコル、IEAのデータなど)の採用
    • 統一的な排出係数を用いることで、企業間比較を可能にする。
    • 排出量の透明性を高め、ステークホルダーへの説明責任を果たす。

リース会社との協力体制の強化

  • リース契約時に環境データの提供を義務付ける
    • リース会社がエネルギー使用データを報告する契約を締結。
    • データの提供を義務化することで、排出量の精度向上。
  • リース会社と共同でサステナビリティプログラムを構築
    • 低排出型リース資産(電気自動車、エネルギー効率の高い設備など)の導入を促進。
    • 環境に配慮したリース契約の枠組みを整備。

外部機関の認証取得

  • 第三者認証(ISO 14064など)の活用
    • 排出量の算定プロセスを国際基準に準拠させる。
    • データの信頼性を向上させ、投資家や消費者の信頼を確保。
  • 環境報告の透明性を向上
    • CDP、TCFD、SBTiなどの報告枠組みに適合し、企業の環境対策を明確に示す。

 カテゴリー8(リース資産)に関する排出量の算定と報告は、企業の持続可能性戦略において重要な要素です。正確なデータ収集と標準化された算定手法を確立することで、環境負荷を適切に管理し、企業価値の向上にもつながります。リース会社との連携を強化し、デジタル技術を活用することで、より効果的な排出管理が可能となるでしょう。

 リース資産の排出量管理において重要なポイントは、企業の持続可能性目標達成に向けた取り組みとして、リース資産から発生する間接排出(Scope3カテゴリー8)の把握と管理です。これにより企業は環境負荷を低減し、ステークホルダーからの信頼を得ることができます。カーボンニュートラルを目指す企業にとって、リース資産における排出量の管理は、温室効果ガス排出量の全体削減に欠かせない要素です。適切なデータ収集と排出量算定を行うことで、温室効果ガスの削減に貢献し、企業のCO2排出削減目標を達成できます。

 EcoNiPassは、こうしたリース資産の排出量管理を支援するツールとして、企業がリース資産に関連する排出量をより効果的に把握し、分析できる環境を提供します。特に、リース資産のエネルギー消費や排出量に関するデータを簡単に収集・管理でき、企業が自社の環境負荷を可視化し、改善策を見出す手助けをします。これにより、企業はカーボンニュートラルに向けた戦略を一層強化し、持続可能な社会の実現に貢献することができます。

 企業の環境負荷削減には、リース資産の排出量を適切に管理し、積極的にカーボンニュートラルを目指す取り組みが欠かせません。EcoNiPassのようなデジタルツールを活用し、より効果的に排出量を管理しカーボンニュートラル達成に向けた一歩を踏み出してみませんか?

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