11月28日 鹿島市役所「脱炭素経営セミナー」レポート

11月28日、佐賀県鹿島市役所にて「脱炭素経営セミナー」が開催されました。
本セミナーは、鹿島市が脱炭素に向けた取り組みを進める中で、EconiPass導入に向けた検討段階の事業者を対象に、ツールの活用イメージや実務の流れを共有する場として行われたものです。
当日は市内の事業者が集まり、実際にEconiPassを操作しながら、「排出量の見える化」がどのような作業として進んでいくのかを体験するプログラムが用意されました。
セミナーは、前半で脱炭素を取り巻く背景を整理し、後半で操作デモを行う構成となっており、全体像を段階的に理解できる内容でした。
目次
まず「世界と日本の脱炭素の“今”の取り組み」を知ることから
セミナー前半では、EconiPass担当者より、脱炭素が求められている背景について説明が行われました。
国際的な規制強化に加え、国内でも企業に求められる対応が増えている状況を踏まえ、参加者が現在どのような環境に置かれているのかを整理する内容です。
欧州ではバッテリー搭載製品にCO₂報告義務が始まり、国境炭素税(CBAM)においても、アルミ・鉄鋼などの分野で排出量の提出が求められるようになっています。
日本においても、建設業や製造業を中心に、取引先からCO₂データの提出を求められるケースが増えています。
こうした動きは、すぐにすべての企業が対応しなければならないというものではない一方で、事業規模を問わず関係してくるテーマとして共有されていました。
企業事例から見る「国内の変化」
続いて紹介されたのは、EconiPassが実際にどのように活用されているのかという具体的な企業事例です。
多拠点を抱える商社がEconiPassを導入し、省エネ法に対応するための報告作業の負荷を軽減した事例や、食品メーカーがエネルギー使用状況を整理・可視化したことをきっかけに、コスト面の見直しにつながった事例が紹介されました。
また建設業では、現場ごとにエネルギー使用量を把握したいというニーズに対し、排出量の確認にEconiPassを活用している事例も共有され、業界ごとに異なる課題や活用の仕方が示されました。
業種や事情は異なるものの、国内では脱炭素への動きが短期間で進んでいることが示され、「まず見える化を始めること」が次の行動につながっていく、という流れを自然に理解できる内容となっていました。
実際にEconiPassを触ってみる
まずは「手入力だとどんな作業になるのか」を体験
後半では、電気料金明細に記載された数値を使い、まずは手入力での操作を体験しました。
明細のどこに必要な数字が記載されているのか、どの数値を使えば排出量が算出できるのかを、画面を見ながら一つずつ確認していきます。
操作自体は難しくないものの、数字を追いながら入力していく様子からは、「この作業を継続していくには時間がかかりそうだ」という空気も感じられました。
入力した数値はEconiPass上で自動的に整理され、CO₂排出量や月別グラフとして表示され、基本的な流れをつかむ時間となっていました。
PDFを読み込ませると、あとは確認するだけ
続いて紹介されたのが、PDF読み取り機能です。
電気料金明細のPDFをアップロードすると、必要な項目が自動で読み取られ、排出量や月ごとの推移がすぐに表示されます。
手入力と比較すると作業負担が大きく軽減されることが分かり、会場には「これなら扱えそうだ」という雰囲気が広がっていました。
PDFで読み込めば、あとは内容を軽く確認するだけで済む点から、最初のハードルが下がっていく様子も伝わってきました。
生成AIで「削減アイデア」をつくる
PDF読み取りのデモに続いて、EconiPassに搭載された生成AIによる削減アイデア提案機能が紹介されました。
「来年度までに1トン削減したい」
「予算はこのくらいで考えたい」
といった条件を入力すると、それに応じた削減アイデアが自動で一覧化されます。
空調設定の見直しや社用車の運用改善など、現場で検討しやすい内容が中心で、何から手を付けるかを考える際の材料として活用できる点が印象的でした。
外部の専門家に相談しなくても、社内で検討を始めるための材料として使える点にも、参加者の関心が集まっていました。
脱炭素経営セミナーを通して
今回の脱炭素経営セミナーは、脱炭素に向けた取り組みについて、「まず見える化から始めてみる」という現実的な一歩を、実際の操作を通じて確かめられる内容でした。
参加者からは、
「触ってみると、思っていたより操作が分かりやすかった」
「現場に任せきりにせず、自分自身でも把握しておきたいと感じた」
「作業が増えるだけでは続かないので、扱いやすさは大事だと思った」
といった声が聞かれ、無理なく継続できるかどうかを重視して参加していた様子がうかがえました。
脱炭素への取り組みは事業者ごとに進め方が異なりますが、市が全体に関わりながらその動きを後押ししていくことで、環境に対する考え方や実践が、事業者の間に少しずつ広がっていく—
その積み重ねが、環境にやさしい循環として地域の中に育っていくのではないかと感じられるセミナーでした。
EconiPass編集部としても、今後こうした現場の動きを丁寧に取材・発信しながら、それぞれの事業者が自分たちのペースで脱炭素への一歩を考えていく過程に、引き続き寄り添っていきたいと考えています。





